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「強く」「軽く」。航空機向け新素材で日本は存在感を発揮できるか

アルミニウム、二律背反の関係を克服へ
「強く」「軽く」。航空機向け新素材で日本は存在感を発揮できるか

旅客機構造材料の使用比率

 航空機や自動車、鉄道車両など、抜本的な軽量化を目的とした国家プロジェクトが進んでいる。炭素繊維など、すでに日系メーカーが強い素材だけではなく、価格の高さが普及へのネックとなっているチタンや航空機向けシェアでは海外勢が多くを占めるアルミニウムなど、非鉄材料の研究も進む。航空機向け用途を中心に、素材開発の最前線を追った。

 航空機向けの多くは海外メーカー製が占めるとされるアルミ材料。現在、航空機向けアルミ合金では、最も高強度な7000番台の材料が主流となっている。新構造材料技術研究組合(ISMA)での取り組みとしてUACJの渡辺良夫技術開発研究所第一研究部長は、「現行のアルミ合金よりも高強度で高靱(じん)性の製品開発を目指している」と話す。

 強度と伸びは二律背反の関係にある。強度が高いと伸びが低く、反対に伸びが高いと強度が低くなるからだ。開発に当たっては、7000番台系アルミ合金の強度と伸びのバランスを取るため、亜鉛や銅、マグネシウムの添加量を検討し、合金組成を最適化した。

 これまでの知見に基づく製造条件を適用し、中間目標値である耐力600メガパスカル以上、伸び14%以上を達成した。最終目標達成に向け、組織制御に主眼を置いた新規プロセスの開発を進めているという。

 例えば米ボーイングの「767」の機体ではアルミが全体の7割以上を占めたが、「787」では複合材料として炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の存在感が増すなど、素材の採用競争も激化している。今回の取り組みで得た技術は「自動車や鉄道などにも適用できるのではないか」(渡辺部長)といい、要求水準が高い航空機向けを目指しつつ、裾野を広げる考えだ。
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日刊工業新聞2016年3月22日 深層断面から抜粋
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
「軽くて」「強い」が素材採用のキーワードだが、実は素材間の「相性」も重要な要素だ。軽量化素材として、航空機にCFRPが採用されるにつれて、複合材料として相性のいいチタンが多く使われるようになった。従来のアルミではCFRPと接合すると腐食が発生してしまうからだ。アルミ側も腐食が発生しないような被膜技術の開発なども進んでいる。さらに航空機から、自動車、鉄道車両などより量産分野で採用を狙っている。量が増えればそれだけコスト削減効果も増してくる。

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