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鬼怒川ゴム、政投銀TOB受け入れで海外展開は加速するか

自動車部品のグローバル再編、政府が後押し
 鬼怒川ゴム工業は日本政策投資銀行のTOB(株式公開買い付け)を受け入れる。政投銀の支援を受け、グローバルで営業や生産体制を拡充する。背景には国際競争が激化する一方、世界規模で部品を供給できる競合他社が少ない市場環境がある。ただ3―5年でグローバル化に対応できなければ競争力を失うとの強い危機感から、非上場により意思決定を早めて海外展開を加速することにした。

 自動車メーカーは世界戦略車の拡大や部品の共通化を推進。部品メーカーは各地で製品を納められなければ、部品を共通化した複数車種の受注を失う可能性がある。鬼怒川ゴム主力の車体シールでは全域をカバーできる競合他社は少なく、グローバル供給体制を確立できれば成長機会は広がる。ただ欧米メーカーを中心に合従連衡が進み競争が激化する。

 鬼怒川ゴムは世界9カ国に15の生産拠点を展開。2015年度は売上高と営業利益で過去最高を見込む。現状は日産自動車との取引が多く、欧米メーカーへの販路拡大を模索。主要地域で生産拠点がない西欧での工場確保などに取り組む。

 政投銀との連携で同社の人材や資金を活用し、グローバルで営業体制を構築。M&Aを含め西欧での生産拠点確立を進めることにした。ただこうした取り組みを断行するには上場廃止で株主を一本化し、「スピード感のある経営が必要」(鬼怒川ゴムの高橋昭夫執行役員)と判断した。

 政投銀は7月上旬からTOBを実施する予定で、520億円超で全株取得を目指す。ただ政府の出資を受ける政投銀による経営支援は民業圧迫を懸念する声も少なくない。
日刊工業新聞2016年3月14日自動車面 自動車め
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
自動車産業のグローバル化に伴って、自動車部品メーカー各社が、M&Aや事業の切り売りを活発化する中で、政府系金融機関の支援を受ける今回のケースは、生き残りをかけた新たなアプローチとして関係者が注目している。

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