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浜松光宣言2023 -浜松を光の「尖端都市」に-

光産業の技術・精神を継承する

静岡大学と浜松医科大学、光産業創成大学院大学、浜松ホトニクスは、2023年6月11日、光産業の発展や社会実装に向けて連携する「浜松光宣言2023」に調印した。光科学と光応用産業の発展や地域振興、起業支援などのテーマに協力して取り組む。

これに遡る10年前、2013年6月11日に同じ4機関は「浜松光宣言2013」に調印している。23年の宣言は13年当時の精神を確認し、継承したものだ。

2013年の調印式 写真右から静岡大学学長伊東幸宏氏、浜松医科大学学長中村達氏、光産業創成大学院大学学長加藤義章氏、浜松ホトニクス代表取締役社長晝馬明氏(役職は当時)

13年の宣言と同年、文部科学省のCOI-STREAM事業に採択され、15年には静岡大学浜松キャンパスに宣言の理念を具現化する「光創起イノベーション研究拠点棟」が竣工して4機関が集い、数多くの研究開発の成果が生まれた。19年には浜松医科大学に「医工連携拠点棟」が整備された。また17年には産学官金連携機関の浜松地域イノベーション推進機構内に光産業を支援する「フォトンバレーセンター」が発足した。

浜松は浜松高等工業学校(現静岡大学工学部)の助教授だった高柳健次郎氏が偉業を成し遂げたテレビジョン発祥の地。その技術を継承した光産業が興り、今も発展し続けている。 

11月17日には浜松光宣言の10周年を記念して、「HAMAMATSU異分野交流会」が開催された。折しも宣言機関の浜松ホトニクスが主催する光技術の総合展示会「PHOTON FAIR 2023」の会期中ということもあり多くの関係者が参加した。

交流会では4機関から気鋭の8人が登壇したパネルディスカッションが行われ、「『光の尖端都市HAMAMATSU』を実現するために何ができるのか」意見交換した。そこでは光の街「HAMAMATSU」として4機関の連携だけでなく、教育などを通じて市民との関わりをさらに深めていくべきであるという議論が展開された。

パネルディスカッションの様子
交流会の様子

8人のパネリストが語る「光産業」「浜松」への思い

▼静岡大学

秋元 菜摘氏
 「浜松が光の都市として発展するためには、専門的研究や予算の問題だけでなく、創造的な人材が集積するよう、生活環境を含めたまちづくりの観点も求められるであろう。併せて、光(技術)に触れられる公共スペースの構築やイベント開催などを通して、市民の理解を深めることで、地域文化への貢献にも繋がると考えられる」

大多 哲史氏
 「浜松市が『光の街』として発展するためには、世界的に認知されるような研究成果の発表を現在進行形で行うと同時に、その研究内容の一般市民にもわかりやすい形でのアウトプットが必要と考える。また例えば初等教育で光技術の教育を取り入れ、浜松市民の誰もが光技術を説明できるような状態が作れると良いのではないだろうか」

▼浜松医科大学

本藏 直樹氏
 「真の光尖端都市であり続けるためには、長期の視点でおこなわれる人材育成が重要である。また更なる発展のためには、若い世代だけでなく中堅クラスの研究者たちが垣根の無い人的交流をより推進し、議論することで、自由な発想に基づいた研究を、思い立ったときすぐに開始できる機会を提供できるかが重要である」

田村 和輝氏
 「医用光応用をベースに、市民が光に興味を持つきっかけを作りたい。病院で使われる光学機器の多くは赤外光を使っているが、患者は光を使って観察・治療されている実感がない。そこで、検査や治療の説明を通して少しでも患者や家族に興味を持ってもらうことができるのではないだろうか」

▼光産業創成大学院大学

林 寧生氏
 「浜松市の強みの一つとして、工場等での徹底した安全管理技術が挙げられる。この安全管理技術に光技術を導入することで光基軸安全技術を確立し、それを世界に輸出するのはどうか。特に、工業用ロボットに光センシングを導入することで人との安全な協調作業が可能になれば世界から注目されると思う」

石井 彬史氏
 「浜松が光の都市として世界的に注目され、選ばれるためには、スーパースターの存在が不可欠である。企業としても大事だが、研究者や実務者が個人として輝く個性や才能を発信する必要がある。結果、地域内の研究者や子供達から注目してもらい、自分もそうなりたい、関わりたいと思わせることが中長期的にみて大事である」

▼浜松ホトニクス

渡辺 向陽氏
 「光を用いたビジネスや産業活動が広がりを見せる一方で、光学エンジニア不足が世界的に問題になっている。これを解決し浜松を光の尖端都市にするためには、米国光学会が行っているような、若手の光学研究者・エンジニアが活躍できるような人的ネットワーク構築を促す仕組みが浜松にも必要だ。また産学官金連携のもと、小中学生向けの光学教育を推進し、次世代の光学エンジニアの卵を育成する活動も必要だと感じている」

鈴木 真澄氏
 「世界に倣うのではなく、浜松ならではの独自路線を展開することが大事なのではないか。例えば、浜松を象徴する言葉として『やらまいか』という言葉がある。光をテーマにしたイノベーションや新しい動きを創出することが必要だと思う。若手の積極的な挑戦を支援する環境づくりを推進していけたらいい」

10年前、伝統を受け継いで光に何ができるかを追い求める志を抱く4機関の関係者が集った。同じように、これから先は後に続く次世代の出番が訪れる。

光産業の研究拠点・支援施設

宣言に参画した2大学内には光産業の振興に取り組むための拠点が整備されている。

光創起イノベーション研究拠点棟(静岡大学浜松キャンパス内)

「いつまでも若く、安心して、有意義な生活を送れる社会」を実現するために、時空を超えて光を自由に操る、つまり、今は非常識と思われているような空間分解能・時間分解能を実現する光技術と光の波長・位相・強度を自由に操れる技術を確立する。それにより病気の予防、早期発見、早期治療で健康な社会(医学のために光を操る)、移動することなく社会や他人とかかわれる生活(空間を越えて光を操る)、五感を再生できる社会(時間を越えて光を操る)を目指している。

医工連携拠点棟(浜松医科大学)

医療や介護などの現場の課題を解決する新しい医工連携プロジェクトを推進する中小企業が次のステージにステップアップするための「アイデアの実現性の検証」を支援する医工連携スタートアップ支援事業、医工連携出会いのサロン、医療機器・薬機法関連セミナー、医療現場との情報交換会などの事業を展開している。光宣言4機関やその他の機関との密接な連携の下、新産業を連鎖的に創出していくために、地域大学間の連携など新しい産学連携の取り組みを推進している。

光創起イノベーション研究拠点:https://www.iperc.net/
 はままつ医工連携拠点:https://www.ikollabo.jp/

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