新開発エンジン搭載、スズキが新型「スイフト」で追究したもの
【商品企画本部 四輪商品第二部 チーフエンジニア 小堀昌雄氏】
スポーティーでスタイリッシュ―。5代目になる新型「スイフト」のコンセプトは「エネルギッシュ×軽やか 日常の移動を遊びに変える」。今回は20代から30代前半のいわゆる“Z世代”をメーンターゲットに開発した。自分らしさを表現できる個性的なデザインと幅広い移動シーンに対応する走行性能を追求した。これまでのスイフトを乗ってきた人、新たに乗る人がともに満足できるようにした。
自動車に乗るという選択肢が減ってきた若者の中で、自動車に乗る選択肢としてスイフトが挙がるようにしたいと思った。エクステリアは一目見たら印象に残るデザインで、今までのスイフトにとらわれない個性・走りを想起させるスタイリングを追求。インテリアもドライバーを包み込む立体的な造形で車との一体感を表現した。
開発がスタートしたのは2019年。当時は電動化の声もある中でのエンジン開発だったが、代々のスイフトのメーンターゲットである若い人が日常生活で使用することを想定して購入を検討しやすい価格に設定するため、ガソリン車にすることを決めた。
調査では先代スイフトのユーザーに加え、メーンターゲット層のZ世代が何を求めているのかを知るため、20歳前後の自動車に関心がない人や所有していない人の価値観を聞いた。その中で出てきた16―17個のキーワードをコンセプトなどに反映した。
先代の4代目スイフトの開発にも携わった経験から、デザインや走行性能、先進運転支援システム(ADAS)などをより良くすることにこだわった。新開発の「Z12E型エンジン」と無段変速機(CVT)を搭載し、燃費性能と走行性能の両立を実現した。
安全装備やADASは、運転時の負担を軽減して使いやすいと感じてもらえるようにした。車間距離を保ちつつ自動的に加減速から停止までを支援するアダプティブクルーズコントロール、小型車では初搭載の車線中央付近の走行を支援する車線維持支援機能を盛り込んだ。
ステアリング制御も見直し、今回はドライバーに自然な支援をできる雑味がない味付けにしている。運転すると楽しいという車にしなければいけないという思いも込めており、従来のスイフトユーザーへの回答にもなった。
【記者の目/幅広いシーンで使いやすく】
長年親しまれてきたスイフト。洗練された新デザインの採用で個性が増した外観、新型エンジンや安全装備により、乗る楽しみを追求。昨今、メーンターゲットである若年層は自動車離れが叫ばれるが、幅広いシーンでの使いやすさの訴求によって若者の選択肢の中に入ることができるのか注目したい。(八家宏太)