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企業エンジニアを高給与で迎え入れ…千葉大がデータ・AI活用促進、免疫・ワクチン分野で生かす

DS人材で新組織

千葉大学は研究支援のデータサイエンス(DS)人材を集めた組織「データサイエンスコア」を2024年度前半をめどに立ち上げる。企業エンジニアを高給与で迎え、ビッグデータ(大量データ)や人工知能(AI)の活用を、強みとする免疫・ワクチン学分野でまず進める。研究成果を活用する子会社やベンチャーファンドを24年度中にもスタート。支援分野を予防医学や地球観測などにも拡大し、千葉大関連スタートアップを現在の約50社から10年後に300社にする計画だ。

文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」(J―PEAKS)に採択された。研究力強化の複数施策を特定分野で成功させ、他分野にも適用する。

千葉大は鼻や口などの粘膜免疫の研究を強みとする。また治療学AI研究センターを設置、バイオインフォマティクスを活用してワクチン開発の研究に取り組む。今回設置する千葉大学DSコアは、研究支援人材を集団として抱え、変化の激しいDS関連の解析ツールやシミュレーションのインフラを導入・運用する。

特区の形で高額給与や企業とのクロスアポイントメントを進め、24年度に開設する情報・DS学府の教員らとの相乗効果を目指す。さらに大規模言語モデルや量子コンピューターなどの先端インフラ導入に向け、大学共同利用機関法人などと連携する。

感染症やアレルギーなど免疫・ワクチンの研究拠点は改組で強化する。日本医療研究開発機構(AMED)でのワクチン開発と連動した臨床試験支援と、シングルセルや次世代イメージングなど技術開発のセンターを整備する。

動物モデルの高度化と、代替の人工臓器やシミュレーションモデルに取り組むセンターも構築する。計画中の事業子会社や、民間のベンチャーファンドに出資する国立大学認定ファンドを使い、社会実装につなげる。

日刊工業新聞 2024年02月02日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
大学でDS人材といえば教育(新学部など)が思い浮かぶが、千葉大が打ち出したのは研究を支えるDS専門人材の雇用だ。ユニークで先進的だが気になるのは、そのような人材を民間から引っ張ってこれるだろうか? という点だ。これに応えるのが、「支援の職員という役割だけでなく、博士号取得など後押しし、研究人材として育成するケースもある」という作戦だ。技術系職員などと似た形で、大学ならではの方策とあって、民間の優れた技術者・研究者を引き抜く手立てになるかもしれない。

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