東芝「過去と決別」へ残る課題
追加の構造改革避けられず。原発のテコ入れ、誰がやる?
東芝の構造改革にひとまずの決着が見えてきた。不採算事業の切り出しが進み、目先の“出血”は止められた。とはいえ、これで順風満帆というわけにはいかない。業績のV字回復の達成にはエネルギーやストレージ事業にも踏み込んだ構造改革が欠かせない。
エネルギー事業にとって最大の懸念材料は原子力発電事業だ。関連子会社の米ウエスチングハウスでは今でも減損リスクがくすぶっている。世界の経済情勢が大きく影響する上に、競合する海外勢が国家レベルで動く中、民間企業単体ではコントロールできないという声は大きい。「日本政府が介入し、日立製作所や三菱重工業と事業を統合すべきだ」とする社外取締役の意見もある。
ただ現実路線では難しいシナリオだろう。となると、もう一つの火力発電事業で確実に稼ぐことが急務だ。事業の世界展開に向けて米ゼネラル・エレクトリック(GE)と仏アルストム連合と進めていた提携拡大は、今回の会計問題を受けてストップしている。問題に一定のめどがついた今、早期に連携を加速し、海外案件の獲得にかじを切るべきだ。
ストレージ事業でもリストラ案を練る過程でメモリー事業の分社・上場案が候補にあがった。足元では同案は後退したが、収益性が悪化して設備投資や研究開発投資が確保できなくなる可能性があり「継続して検討している」(室町正志社長)。
また、今回の事業の切り出し(カーブアウト)による事業の縮小に伴い、さらなる人員削減に踏み込む必要性もあるだろう。ここで安穏とせずに継続的な構造改革を進められるかどうかが、成長に向けた必須の課題だ。
東芝は不適切会計問題を機に業績が悪化し、財務が毀損(きそん)していた。医療機器子会社の売却により2016年度末の債務超過リスクは回避できたが、17年3月期も財務健全性の課題が付きまとう。特に原子力子会社の米ウエスチングハウスの減損リスクが懸念される。
原子力事業は15年末に、「のれん代」としての約3800億円と固定資産約3600億円の残高を有する。同事業に関する収益計画は「見通しが甘い」(証券会社アナリスト)との声があり、計画が下振れるとリスクが顕在化し、財務が大きく毀損する恐れがある。
財務の悪化を防ぐには受注の拡大とコスト管理の徹底を急ぎ、キャッシュの創出力を高めるしかない。将来には増資の選択肢も考える必要がある。
2016年度の事業計画が定まったことで、今後の焦点は次期経営体制に移る。同社のある社外取締役からは「(事業計画を発表した後に)成長戦略にふさわしい会長、社長、執行役を決める」との声が出ており、室町社長を続投させるかどうか議論する見通しだ。
室町社長自身は任期について「3年続けるということはない」としている。早ければ9月にも「特設注意市場銘柄」から解除される見込みで、これを機に社長職を譲ると見られていた。だが、事業計画が始まる16年度に合わせ、新トップに変えるという選択肢も浮上している。
次期社長候補は社会インフラ部門を担う志賀重範副社長と、ストレージ部門を担う成毛康雄副社長の2人が有力視されている。
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エネルギー事業にとって最大の懸念材料は原子力発電事業だ。関連子会社の米ウエスチングハウスでは今でも減損リスクがくすぶっている。世界の経済情勢が大きく影響する上に、競合する海外勢が国家レベルで動く中、民間企業単体ではコントロールできないという声は大きい。「日本政府が介入し、日立製作所や三菱重工業と事業を統合すべきだ」とする社外取締役の意見もある。
ただ現実路線では難しいシナリオだろう。となると、もう一つの火力発電事業で確実に稼ぐことが急務だ。事業の世界展開に向けて米ゼネラル・エレクトリック(GE)と仏アルストム連合と進めていた提携拡大は、今回の会計問題を受けてストップしている。問題に一定のめどがついた今、早期に連携を加速し、海外案件の獲得にかじを切るべきだ。
ストレージ事業でもリストラ案を練る過程でメモリー事業の分社・上場案が候補にあがった。足元では同案は後退したが、収益性が悪化して設備投資や研究開発投資が確保できなくなる可能性があり「継続して検討している」(室町正志社長)。
また、今回の事業の切り出し(カーブアウト)による事業の縮小に伴い、さらなる人員削減に踏み込む必要性もあるだろう。ここで安穏とせずに継続的な構造改革を進められるかどうかが、成長に向けた必須の課題だ。
ウエスチングハウスの減損規模は?
東芝は不適切会計問題を機に業績が悪化し、財務が毀損(きそん)していた。医療機器子会社の売却により2016年度末の債務超過リスクは回避できたが、17年3月期も財務健全性の課題が付きまとう。特に原子力子会社の米ウエスチングハウスの減損リスクが懸念される。
原子力事業は15年末に、「のれん代」としての約3800億円と固定資産約3600億円の残高を有する。同事業に関する収益計画は「見通しが甘い」(証券会社アナリスト)との声があり、計画が下振れるとリスクが顕在化し、財務が大きく毀損する恐れがある。
財務の悪化を防ぐには受注の拡大とコスト管理の徹底を急ぎ、キャッシュの創出力を高めるしかない。将来には増資の選択肢も考える必要がある。
“ポスト室町”
2016年度の事業計画が定まったことで、今後の焦点は次期経営体制に移る。同社のある社外取締役からは「(事業計画を発表した後に)成長戦略にふさわしい会長、社長、執行役を決める」との声が出ており、室町社長を続投させるかどうか議論する見通しだ。
室町社長自身は任期について「3年続けるということはない」としている。早ければ9月にも「特設注意市場銘柄」から解除される見込みで、これを機に社長職を譲ると見られていた。だが、事業計画が始まる16年度に合わせ、新トップに変えるという選択肢も浮上している。
次期社長候補は社会インフラ部門を担う志賀重範副社長と、ストレージ部門を担う成毛康雄副社長の2人が有力視されている。
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日刊工業新聞2016年3月21日「深層断面」から抜粋