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人手不足、中小企業が直面する厳しい現状

商工中金調査、経営革新進まず
 中小企業の多くが、製品開発や生産改善、販売手法の見直しといった経営革新に意欲的に取り組む一方、人材不足が挑戦の足かせになっている実情が商工中金の調査から明らかになった。また、労務管理や職場組織の改編、教育・研修などで新しい方法に取り組んでいる企業は、業況が「良い」とする回答割合が比較的高かった。

 過去5年間に実施した「経営革新」を複数回答の形で尋ねたところ「新製品・サービスの開発」(55・2%)が最も多く、「人手により実施されていた業務工程に機械やITを導入」(47・2%)「既存製品・サービスの大幅な改善」(44・7%)が続いた。一方で、これらを遂行する障害については「能力のある人材が不足」の回答が全体の68・9%と突出。「既存の借り入れ負担が重い」「過当競争でもうからない」との声もあるが、いずれも2割程度にとどまっており、人材不足の深刻さが際立っている。

 調査からは「最新鋭の機械の導入を検討したが、現場の反発で中止した。社員が高度な技術の習得に難色を示したため」(金属製品製造業)や「東京に営業所を開設したが人材不足が深刻でいまだ軌道に乗っていない」(運輸業)といった切実な声もあった。

 現在の業況と経営革新に関しては今回の調査では、具体的な相関関係はうかがわれないが、「労務管理の方法の改善」を挙げた企業については業況が「良い」とする回答割合が39・9%で、「悪い」の29・8%よりも高かった。「賃上げを伴う制度変更は業況が良い企業の方が取り組みやすいことを反映している」(商工中金調査部)と分析している。

 調査は2015年11月に商工中金の取引先1万2814社を対象に実施。5680社から回答を得た。
日刊工業新聞2016年3月15日付総合4面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
人手不足の問題は、経営のあらゆる面に影を落としていることをあらためて実感します。国や自治体による人材獲得支援も、生産性向上へ向けた取り組みも即効性のある施策ではないだけに、現状をどう克服するか難しい。

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