大手不動産がベンチャー支援を強化するワケ

「アークヒルズ」にはDIY工房

 大手不動産各社がベンチャー支援を強化する動きが目立つ。三井不動産はベンチャーを投資対象としたファンドを新設した。森ビルは自社の主力施設に本格的な工作機器を備えた会員制DIY工房を誘致し、東急不動産はKDDIと組んで会員制オフィスのサービス充実を図っている。好調なオフィスビル市況が続く今、布石を打って将来のビジネスチャンスにつなげる狙いだ。

スピリット覚醒


 「ビルと商業施設の賃貸、住宅分譲とい"クリーンナップ”が未来に向けて永遠に続くとは思わない」。三井不動産の北原義一取締役専務執行役員は言い切る。同社は独立系ベンチャーキャピタル(VC)大手のグローバル・ブレイン(東京都渋谷区)と総額50億円のファンドを設立した。期待を寄せているのは約5500社というオフィスビル・商業施設のテナント企業の中から投資対象が現れること。「異端・異能は大学生や起業家の専売特許ではない。オフィスワーカーに眠っているベンチャースピリットを覚醒させたい」(北原取締役)。

 4月には既存のベンチャー向けオフィス4施設の入居企業などを組織化し、個人・法人約330会員で構成する「31ベンチャーズクラブ」を設立。ベンチャー向けオフィスも拡充し、床面積ベースで2017年度末までに現在の2倍の約3600坪(1坪は約3・3平方メートル)に増やす。

交流で技術革新


 森ビルの大規模複合施設「アークヒルズ」(東京都港区)で4月に開業する「テックショップトウキョウ」は本格的な工作機器を備えた会員制DIY工房。本家の米テックショップは米国8カ所で工房を展開しており、本家同様、会員同士の交流からビジネスや技術革新が生まれる施設を目指している。

 「当社のタウンマネジメント力を駆使して成功を支援させていただく」(北林幹生森ビル副社長)。森ビルはテックショップの開設を開業30周年の目玉の一つに位置づける。隣接して5月に開業する「カレイドワークス」には複数の独立系VCが入居する予定で、「高い志を持った人が出会う街を展開していきたい」(同)という。

ユーザーと共創


 東急不動産がKDDIと組んで提供する会員制オフィス「ビジネスエアポート エリアKDDI丸の内」はIT関連のトラブル対応などをサポートする「ITコンシェルジュ」が常駐するほか、多言語に対応した3者間通訳サービスなども利用できる。

 「ITが進化して働き方も変わってきた。当社もユーザーの中に入り、共創が生まれることが希望だ」(和田真理東急不動産ビル運営事業部グループリーダー)。ゆくゆくは成長したベンチャーが自社のテナントとして入居することも期待している。

日刊工業新聞2016年3月16日付建設・エネルギー・生活面

神崎 明子

神崎 明子
03月21日
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とりわけユニークだと感じたのは森ビルが開設するDIY工房。都心のど真ん中「アークヒルズ」を拠点として実施するベンチャー支援はネット系が中心かと思いきや「ものづくり」。しかも会員同士の交流から技術革新が生まれる施設を目指しているとのこと。こうした新しいコンセプトの拠点を通じて、日本の強みであるものづくり企業が輩出されることが期待されます。

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