業界初のポイント制を導入した日立建機。囲い込みは成功しているか
勢いのあるレンタルがカギ握る
土木工事で活躍する油圧ショベルなどの建設機械とポイント制度。一見その相性をイメージしにくいが、日立建機は2012年6月に建機業界で初めて、国内の顧客を対象にポイント制度「RSSポイント」を始め、成果を上げている。一定のポイントをためると商品と交換できる仕組みで、販売、レンタル、修理などサービスの3部門すべてを利用してもらう囲い込み策として展開する。
「レンタルとサービス両部門の利用者は、当社発足以前の2・5倍に増えた」。日立建機日本(埼玉県草加市)の櫻井俊和社長はこれまでの成果を強調する。同社は日立建機の国内での販売、レンタル、サービス3部門を統合し、12年4月に発足した。
それまでは3部門が別々に事業展開し、顧客との取引も販売のみ、レンタルのみと限定的だった。販売とレンタルは相反する性格のものだが、顧客が求めるものを1社で提供できる体制を目指しての統合だった。
その手段として、社内提案公募で人気の高かったポイント制度を採用した。利用する部門が多くなるほど、ポイント還元率を高めたのがミソだ。半年間で1部門の利用では1ポイントのところを、2部門では2ポイント、3部門では3ポイントたまるようにした。営業本部企画部の谷村公輔さんは「還元率をどのように設定するかが一番のポイントだった」と振り返る。
こうした戦略は、一定の成果を生み出している。15年4月―16年1月時点で、2または3部門にまたがる複数部門利用者は、顧客全体では26%なのに対し、RSSポイント登録者では36%に達した。
RSSポイント登録者は年々増え、顧客約4万社のうち、約1万6000社が利用する。ただ、ここ1―2年は登録社数の伸びが鈍っている。レンタルの少額取引の顧客が、ポイントがあまりたまらないという理由で登録していないとみられる。
そこで、こうした顧客の取り込みに動いた。当初は商品との交換は1000ポイントからだったが、15年3月に500ポイントからに変更し、500ポイントで交換できるペンや文房具など日用品を取りそろえた。
約2000種類ある交換商品では、どんなものが人気なのか。商品券・ギフト券への交換が多いほか、ベスト、ブルーシート、軍手など建設現場で実用性の高い商品も支持されているという。オイルなど建機の純正品も一定の交換数があるが、谷村さんは「もう少し増えれば」と期待する。
今後の登録者増加にも、レンタルの動向がカギを握る。3部門のうち、近年はレンタルに勢いがある。初期投資を抑えられるため安定的に利用者がいる。販売に比べて浮き沈みの波が小さい。レンタル分野では専業会社の存在感が大きいが、日立建機は後発であることもあり、「一番伸びしろがある」(櫻井社長)という。
レンタル利用者を意識して、今後も工具類など実用性の高い交換商品を増やす方針だ。RSSポイントの利用者拡大を、レンタル部門強化につなげたいところだ。
(文=戸村智幸)
顧客4割が登録
「レンタルとサービス両部門の利用者は、当社発足以前の2・5倍に増えた」。日立建機日本(埼玉県草加市)の櫻井俊和社長はこれまでの成果を強調する。同社は日立建機の国内での販売、レンタル、サービス3部門を統合し、12年4月に発足した。
それまでは3部門が別々に事業展開し、顧客との取引も販売のみ、レンタルのみと限定的だった。販売とレンタルは相反する性格のものだが、顧客が求めるものを1社で提供できる体制を目指しての統合だった。
その手段として、社内提案公募で人気の高かったポイント制度を採用した。利用する部門が多くなるほど、ポイント還元率を高めたのがミソだ。半年間で1部門の利用では1ポイントのところを、2部門では2ポイント、3部門では3ポイントたまるようにした。営業本部企画部の谷村公輔さんは「還元率をどのように設定するかが一番のポイントだった」と振り返る。
こうした戦略は、一定の成果を生み出している。15年4月―16年1月時点で、2または3部門にまたがる複数部門利用者は、顧客全体では26%なのに対し、RSSポイント登録者では36%に達した。
RSSポイント登録者は年々増え、顧客約4万社のうち、約1万6000社が利用する。ただ、ここ1―2年は登録社数の伸びが鈍っている。レンタルの少額取引の顧客が、ポイントがあまりたまらないという理由で登録していないとみられる。
500ポイントで商品交換
そこで、こうした顧客の取り込みに動いた。当初は商品との交換は1000ポイントからだったが、15年3月に500ポイントからに変更し、500ポイントで交換できるペンや文房具など日用品を取りそろえた。
約2000種類ある交換商品では、どんなものが人気なのか。商品券・ギフト券への交換が多いほか、ベスト、ブルーシート、軍手など建設現場で実用性の高い商品も支持されているという。オイルなど建機の純正品も一定の交換数があるが、谷村さんは「もう少し増えれば」と期待する。
今後の登録者増加にも、レンタルの動向がカギを握る。3部門のうち、近年はレンタルに勢いがある。初期投資を抑えられるため安定的に利用者がいる。販売に比べて浮き沈みの波が小さい。レンタル分野では専業会社の存在感が大きいが、日立建機は後発であることもあり、「一番伸びしろがある」(櫻井社長)という。
レンタル利用者を意識して、今後も工具類など実用性の高い交換商品を増やす方針だ。RSSポイントの利用者拡大を、レンタル部門強化につなげたいところだ。
(文=戸村智幸)
日刊工業新聞2016年3月18日モノづくり面