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年商29億円に業容拡大も赤字散発、地場住宅メーカー倒産劇の不可解

年商29億円に業容拡大も赤字散発、地場住宅メーカー倒産劇の不可解

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埼玉県草加市の中堅木造建築工事業者リアルウッドが2023年6月19日にさいたま地裁へ自己破産を申請、同月28日に同地裁より破産手続き開始決定を受け、40年近い業歴の幕を閉じた。

同社は1985年7月に設立した地場住宅メーカー。ローコスト住宅メーカーのフランチャイズチェーン(FC)として本店のほか、茨城県、千葉県に事業所を開設。多店舗展開を進め、FC本部とともに成長、05年3月期には年商約29億1100万円にまで業容を拡大した。しかし収益性に乏しく、営業損益では赤字を散発、営業外でどうにか黒字を確保するという状況が続いていた。以降、07年の改正建築基準法の施行、11年の東日本大震災などの影響もあり売り上げはジリ貧に転落。年商は11年3月期で8億円にまで減少し、億を超える最終赤字を散発したことで債務超過に転落してしまう。

17年3月期以降は足元のコロナ禍を含めてほぼ黒字を維持。資産売却を進めたほか、詳細は不明だが債務免除益を計上するなどして23年3月期には債務超過額を約7600万円にまで圧縮した。金融機関からの借入金も一時8億円超あったものが、一部リスケを受けながらも返済を続け4億円にまで減らすなど経営再建を進めていった。同年6月にも経営陣は金融機関に対して事業意欲を示していたという。

しかし同社は直後に自己破産を申請。ホームページは閲覧不能となり、代表電話も通じなくなった。数日後、草加本社には同社を訪ねる施主の姿があった。自宅兼賃貸物件を同社で新築したが、引き渡し前に連絡がつかなくなったという。同社から連絡もなく、現地には状況を知らせる張り紙もなく施主はただ困惑するのみ。申立書によると6月20日の支払い資金を準備できず資金ショートが確実になったためだとある。破綻の直前、金融機関に示した継続意欲は何だったのだろうか。(帝国データバンク情報統括部)


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日刊工業新聞 2024年01月18日

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