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CA出身で初の女性トップ、JAL新社長の素顔

CA出身で初の女性トップ、JAL新社長の素顔

鳥取次期社長(右)と赤坂社長

日本航空(JAL)は、鳥取三津子取締役専務執行役員(59)が4月1日付で社長に昇格する人事を発表した。客室乗務員(CA)出身かつ女性の社長は初めて。赤坂祐二社長(62)は、コロナ禍からの業績回復に道筋をつけ、新体制に次の成長を託す。

鳥取氏は長年、安全とサービスを乗客に提供する最前線の客室部門に携わってきた。同日都内で開いた会見で、鳥取氏は「世界の人々をつなぎ、持続可能な未来をつくることがJALの使命だ。常にお客さまを一番に考え、人と地球に優しい運航を積み重ねる」と抱負を語った。

赤坂氏は鳥取氏について「社員の力を最大限引き出すリーダーとしてJALの価値を持続的に高められると確信している。お客さまと社員を真ん中にした経営をしてほしい」と期待を述べた。

JALは2日に羽田空港で海上保安庁の航空機とJAL機の衝突事故が起きたばかり。鳥取氏には新社長として安全対策の再徹底も求められる。運輸安全委員会の事故調査に協力し、改善点などの分析を進める。「安全運航にゆるがぬ信念で取り組む」(鳥取氏)と決意を語った。

赤坂氏は代表権のある会長に就き、植木義晴会長(71)は退任し取締役となる。

【略歴】鳥取三津子氏 85年(昭60)活水女子短期大学英文科卒、同年東亜国内航空(日本エアシステム、現日本航空)入社。20年執行役員、22年常務執行役員、23年代表取締役専務執行役員。福岡県出身。

素顔/JAL社長に就任する鳥取三津子(とっとり・みつこ)氏

女性社長の誕生は日本の航空業界においても大きな変化だが、鳥取氏は「私は『女性だから』と特段思っていない。私らしくやりたい」と自然体で語る。

「信頼できる仲間に支えられ、議論して、突破口を見つけるのが私のスタイル」という。多様な人々の能力を引き出し、複雑化する事業環境の中で経営にあたる考えだ。

柔和な鳥取氏だが、ある役員は「(会議で同席すると)ピリッとする」とも。議論が社内の論理で進みそうな時、常に鳥取氏が「本当にお客さまはそれを望んでいるのか」と指摘し、原点に立ち返らせてくれるからだ。姉御肌の一面もある。

鳥取氏がCAとして業務を始めた1985年はJAL機の群馬県・御巣鷹山への墜落事故が起きた年だ。「事故の衝撃は心に強く残っている。安全運航の大切さを次世代につなぐ責任を感じる」。

安全と乗客視点の原点を見つめ、仲間ともに新たな時代を歩む。(梶原洵子)

日刊工業新聞 2024年01月18日

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