航空機産業に好機あり…長崎で参入機運高まる、造船の金属加工技術生かす
長崎県で航空機関連産業への参入機運が高まっている。造船業で培った金属加工技術を新分野に生かそうという県内企業は少なくない。中小企業による参入や航空分野を視野に入れた設備投資も出てきた。産学官でつくる長崎県航空機産業クラスター協議会(NAIC、長崎市)は2月、協議会として初の海外展示会出展を予定する。(九州中央・片山亮輔)
コロナ禍により落ち込んだ航空機需要と生産は世界的に回復を見せる。同時に航空機業界は脱炭素化やサプライチェーン(供給網)再編といった変革のさなかにあり、新規参入のチャンスが広がる。
NAIC会長を務めるウラノ(埼玉県上里町)の小林正樹副社長は「航空機需要は回復しており、中・小型機に期待がかかる。海外需要も取り込みたい」と、2023年11月の総会で会員企業を鼓舞した。
ウラノは航空機関連産業の進出企業として長崎県内に生産拠点を置き、チタン製航空機部品の製造などで業界をけん引する。NAICには造船や鉄工などに関連する中堅・中小企業が名を連ねる。地場企業も多数参加し、気を吐く。地元には主要産業である造船が国際競争の激化とともに“浮力”を失う中、重工業の供給網を支えてきたモノづくり技術を拡大市場である航空機分野に生かす狙いがある。航空機エンジン・装備品大手の仏サフランのジャンポール・パラン開発部長は「鍛造分野などで良い技術を持った企業がある」と長崎の企業に期待を寄せる。
会員企業による航空機関連産業への参入や設備投資も続く。濱田屋商店(長崎市)は航空機部品製作用の治具製造を23年に始めた。船舶用ディーゼルエンジンのボルトなどを手がけてきた技術を生かす。濱田幹雄取締役は「新しい事業の柱をつくりたかった」と参入の背景を明かす。
滲透工業(長崎県時津町)は航空機タービンブレードの加工処理などを視野に入れ、プラズマCVD(化学気相成長)設備を導入した。既存技術を組み合わせて金属部品の耐摩耗性や耐食性の向上が期待できるという。外部講師による技術指導を実施中で加工対象の形状に合わせた電圧や出力の調整を学ぶ。
2月には県の補助金を活用し、NAICとしてアジア最大の航空見本市「シンガポール・エアショー」への出展を予定する。マレーシアはじめ東南アジアでは航空機産業が発展している。長崎県は東南アジアにも近く、地の利を生かせると見て、産業の発展に力を合わせる。