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英OQCの32量子ビットコンピューター始動、日本起点に世界へ

英OQCの32量子ビットコンピューター始動、日本起点に世界へ

32量子ビット機の心臓部のプロセッサー

英オックスフォード・クァンタム・サーキッツ(OQC)は、都内の商用データセンター(DC)に設置した32量子ビットコンピューターを起点に、専用線によるプライベート(社内)利用にも対応可能な「量子コンピューティング・アズ・ア・サービス(QCaaS)」のグローバル展開に乗り出した。2023年に表明した事業構想を本格始動し、「32量子ビット機は日本をフラッグシップ(旗艦)とする」(イラーナ・ウィスビー最高経営責任者〈CEO〉)方針だ。

OQCは英オックスフォード大学発のスタートアップ。「Toshiko(トシコ)」の名称を持つ32量子ビット機は英国内にもあるが、まずは日本を起点に顧客開拓などを進める。量子コンピューターの商用機の国内設置は外資系では米IBMに次ぐ2番目だが、日本を起点とする商用サービスのグローバル化ではOQCが先駆ける。

この一環で現在、SBIインベストメント(東京都港区)を幹事役として、事業拡大への投資ラウンドである「シリーズB」において、1億ドル(約145億円)の資金調達が進行中。3月までには完了予定だ。これを機に日系のIT企業や大学に加え、SBIグループを含めたユーザーとの連携も深める。

目玉となる32量子ビット機は一部ユーザーに限定公開する一方で、プライベート対応などを順次進めている段階にある。将来的には米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)経由のパブリック(共用)クラウドでも提供する計画。AWS経由は既に8量子ビット機によるサービスを提供中で、32量子ビット機はアップグレードとなる。

ウィスビーCEOによると、AWS経由では100ユーザーが日々利用し、うち4%は量子技術の専門家、70%はアーリーアダプター(初期採用層)といった構成。プライベート契約は30あり、古典と呼ばれる既存コンピューターとのハイブリッド(併用)化などで「(同契約が)急速に拡大する」とみている。

日刊工業新聞 2024年01月17日

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