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自動車保険の収支悪化…損保大手3社が保険料上げ、補償拡大で顧客の理解促す

自動車保険の収支悪化…損保大手3社が保険料上げ、補償拡大で顧客の理解促す

充電する電気自動車(EV)

大手損害保険3社は、1月に自動車保険料を値上げするのに伴い、相次いで補償を拡大した。東京海上日動火災保険は、電気自動車(EV)の充電切れに対応した新たな補償を追加。三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は、半導体不足などから新車の納車が長期化している事情に応じた補償に改定した。付加価値を付けることで、顧客の値上げに対する理解促進につなげる考え。

東京海上日動は、EVが充電切れになった際に給電業者が駆けつける費用を補う補償を付けた。従来の補償は、電欠になった車両を給電設備のある場所に搬送するレッカー費用を補うだけだった。

EVの普及に伴い、現状は3、4社ほどの駆けつけ給電業者の数が、「今後一気に増える可能性がある」(東京海上)という。将来の駆けつけ給電の需要拡大を見据え、同業他社に先駆けて新たな補償を用意する。

三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保は、車を買い替える際に納車までのレンタカー使用料を補う補償で、使用上限日数を従来の30日から3倍の90日に拡大した。納車時期の長期化で「レンタカー費用補償に対する顧客ニーズが高まっているため」(三井住友海上)としている。

3社は1月に、自動車保険料を平均2・5―3%前後引き上げた。損害保険ジャパンはビッグモーターによる保険金の水増し請求問題の影響を懸念し、今回の値上げは見送った。

3社の値上げの背景には、自動車保険の収支悪化がある。保険料収入に占める保険金支払額の比率「損害率」は、23年4―9月期に前年同期比6―8%程度悪化した。コロナ禍からの経済正常化で交通事故が増えてきた他、資材高で事故車の修理単価が上昇していることが悪化の理由だ。

値上げする3社は、こうした保険料引き上げの事情を顧客に丁寧に説明し、理解を得る取り組みに注力している。さらに補償の拡大で商品の魅力度を高め、顧客の納得感を得る考えだ。

日刊工業新聞 2024年01月09日

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