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銀行・保険・証券…スタートアップ支援、熱帯びる金融

銀行・保険・証券…スタートアップ支援、熱帯びる金融

みずほ銀行が開いたスタートアップと企業とのマッチングイベント

金融業界では、スタートアップを含む新興企業への支援がますます熱を帯びてきた。銀行業界は有望な新興企業を発掘し、長期的な関係の構築を狙って相次いでマッチングイベントを実施。保険業界は新興との協業や株式取得を通じ、保険分野にとどまらない価値創造を目指す。証券業界でも新興の円滑な資金調達をサポートするなど、いずれも趣向を凝らしている。新興が大きく育ち、経済成長のドライバーになることが期待されている。

銀 行/発掘、長期的な関係構築

銀行業界では、大手銀行を中心にスタートアップと企業のマッチングイベント開催が相次いでいる。将来の投融資先となる有望なスタートアップの発掘・育成につなげる。これに加え、銀行が関係を持つ企業と橋渡しすることで企業の成長を加速させる狙いもある。大阪・関西万博の開催や政府による支援を追い風に、拡大するスタートアップ市場を取り込み、エコシステム構築を目指している。

「りそながハブとしてスタートアップと企業をつなげたい」。りそな銀行の持田一樹執行役員は、2023年6月に都内で初開催した「りそなスタートアップクラブ」で、同クラブの立ち上げの狙いをこう強調した。今後、同行は定期的にピッチ会や商談会などを開き、スタートアップと企業を結び付ける構え。同クラブを通じ、「相談すると一緒に成長できると思われるようになりたい」(持田執行役員)という。

こうしたイベントは関西でも頻繁だ。三菱UFJ銀行は京都支店が主催するイベントで、大学発スタートアップなど7社と全国の大企業を引き合わせた。みずほ銀行も大阪市内でマッチングイベントを開催。両行ともスタートアップに関連する情報を行内で一元的に集めて共有する連絡会を組織し、効率的なスタートアップの発掘・育成につなげている。

三井住友銀行は産学融合プロジェクト「関西イノベーションイニシアティブ」と共同で、大学発スタートアップによるピッチイベントを開いた。関西みらい銀行は24年6月に同行として初のビジネスコンテストを開く予定。西山和宏社長は「関西発の新しい技術や企業が世界を変える」と意欲を見せる。

保 険/ヘルスケア分野と非保険の価値共創

生命保険業界では、スタートアップを含む新興企業との協業や株式取得を通じ、保険にとどまらない価値創造と、連携先の成長の同時実現を目指す動きが活発だ。住友生命保険は23年12月、医療データ解析のPREVENT(プリベント、名古屋市東区)の全株式を取得して完全子会社化。プリベントは生活習慣病の重症化リスクの高い人を対象に健康づくりを助言するサービスを提供しており、持病があっても元気に過ごせる「一病息災」が“売り”だ。

一方、住友生命は未病の人の健康増進を後押しするサービス「バイタリティー」を手がける。両社が組むことで、未病の段階から病気になった後まで一気通貫で健康増進サービスを提供できる。一つの会社で、健康な人、持病のある人、両方にサービスを提供できる会社は「他にないだろう」(藤本宏樹上席執行役員)。まずは自治体を通じた地域住民向けの市場を開拓。将来は法人の従業員向けサービス需要を取り込む構えだ。

日本生命保険は、患者向け治療支援サービスのWelby(ウェルビー)と業務提携。生活習慣病領域で、個人が自ら健康管理に取り組めるサービスを提供する。第一生命保険はメンタルヘルステクノロジーズ(東京都港区)と協働し、企業の健康経営をサポートする。明治安田生命保険は、キャンサースキャン(東京都品川区)と連携し、がん検診の受診を呼びかける活動を千葉県柏市と北海道函館市で始めた。がん検診の普及に向け、明治安田生命の営業職員が電話や訪問で声がけするほか、キャンサースキャン監修の通知物で受診率の向上を狙う。

国内の保険市場が伸び悩む中、24年は生保各社がヘルスケア関連の新興企業と組んで非保険分野の市場を開拓する動きが活発化しそう。また、こうした動きに伴い新興企業の成長が促されそうだ。

証 券/融資拡大 ユニコーン育成

スタートアップ支援に力を入れているのは、証券業界も例外ではない。創業10年以内で時価総額10億ドル(約1500億円相当)以上のユニコーンと呼ばれる企業の株式上場を促し、日本の産業競争力強化などにつなげようとしている。

みずほ証券は部門横断でスタートアップの支援に取り組む。新規株式公開(IPO)の部署と投資銀行部門など部門横断で連携し、M&A(合併・買収)や資産証券化など多様な提案を行っている。

大和証券は子会社の大和ブルーフィナンシャル(東京都千代田区、川原朋子社長)を通じ、売掛金などを担保にしたスタートアップ向け融資を拡大。中でも、大学発スタートアップの成長資金の供給に力を入れる方針だ。

スタートアップを軸に大学と証券業界の結びつきは今後も強まりそうだ。日本証券業協会は23年12月から京都大学とスタートアップ支援に関して連携を進めている。

新興国に目を向ける企業もある。SBIホールディングス(HD)は、サウジアラビアの国立研究開発機関と提携。医薬品、バイオ技術、デジタル技術やフィンテック(金融とITの融合)技術を活用したソリューションも推進し、スタートアップや起業家の支援も行う。

東京証券取引所は新興企業向けのグロース市場の機能をさらに高めていくための方策について、有識者会議で議論をしている。IPO件数が低調に推移し、1件当たりの調達額も小粒にとどまる課題があるためだ。

政府はレイトステージの資金調達を5年で10倍にすると表明している。東証も新興市場制度改革を政策とセットで考え、グロース市場の基準引き上げなどを検討している。

日刊工業新聞 2024年1月1日

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