ロボット・車いす歩行スムーズに…3D点群データ活用が拓く未来
ユニバーサル社会実現へ
国土交通省は3次元(3D)点群データを活用して、自動配送ロボットや電動車いすがストレスなく歩行空間を移動できる街の実現に取り組んでいる。点群データは建築の3Dモデリング技術「BIM」などで実用化されつつあるが、街全体を測定し立体的に再現することで段差や障害物を自動的に避ける移動を可能にしようという試みだ。人手不足が課題のラストワンマイル配送の自動化や、安全に車いすが走行できる社会の実現を目指している。
点群データはレーザー測定器で対象物の位置を3Dで測定し、それら膨大なデータを統合することで対象物の形をバーチャルで再現する。国交省は今夏、JR川崎駅周辺の点群データを収集し市街地を再現した。計測器(MMS)は車載をはじめ台車への搭載やバックパック型で自転車や歩行での測定、ハンディ装置で階段や歩道橋を歩いて測るなど、可能な限り現実に近い姿を再現した。
ロボットや車いすが確実に走行するにはどのレベル(密度)での点群データが最適かなどを調べるため、12月中旬の3日間、川崎市役所から川崎駅間までロボットを有人で走らせた。走行経路の設定や、ロボット自体が走行中に取得したデータによる自己位置推定と点群データマップとの走行軌跡のずれなどを検証する実験だ。
マップの密度は全ての点群データを利用する1平方メートル当たり1万点超の高密度から、同400点程度まで間引きした中密度、同100点の低密度などで実験した。さらにこれらのデータから歩行者や自転車、自動車をフィルタリングし除去した。2024年1月中旬までに結果を検証するが、高密度マップではデータが多過ぎてロボットが自己位置を見失うケースもあった。
ビル建設など刻々と変わる街のデータをどう補正するかや、ロボットが信号機を正確に読み取る技術などまだまだ課題は多い。「段差がなくロボットが走れる街は車いすも安心して走行できる」(児玉総一郎総合政策局企画専門官)とし、ユニバーサル社会の実現を目指している。