災害大国・日本を宇宙から見守る衛星「だいち2号」の実力

ネパール地震発生から1時間後には同国へ画像提供

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だいち2号(JAXA提供)
 東日本大震災を機に、防災に関する取り組みが加速している。こうした中、災害から身を守るためのインフラとして活躍しているのが人工衛星だ。災害の発生時には画像データで被害状況を示し、避難指示の指標にするなど、国民の安全確保に役立っている。洪水や火山の噴火などが全国各地で相次いでいることを踏まえ、災害の発生予測手法としての活用も期待されている。

 日本で災害の状況把握に使われる人工衛星は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の陸域観測技術衛星「だいち2号」だ。東日本大震災で活躍し、その後2011年5月に運用を終えた「だいち」の後継機にあたる。

被害の把握や予測に活用


 重さ2・1トンで、北極と南極の上空を通る軌道を飛行し、地球を観測する。地震に伴う地殻変動や火山の噴火など被害状況をいち早く把握できる。さらに地滑りや地盤沈下などの災害の予測にもつなげられる。自治体の立ち入り規制や気象庁の警戒レベルの判断に活用されている。

 だいち2号は観測対象に電波を放射し、衛星に戻る反射波の強さを測る「合成開口レーダー(SAR)」を搭載している。電波を利用することで昼夜や天候に関係なく地表の観測ができる。

 さらに長波長の電波を使い、森林を透過してその下にある地殻や地盤の微小な変化を捉えられることも大きな特徴だ。だいちに比べ解像度を3倍程度向上させた。

 国内の災害への対応は、JAXA、内閣府、国土交通省、気象庁、国土地理院が連携し行っている。15年5―9月の箱根山の火山活動や、15年8月と16年2月の桜島の噴火などの事例では、だいち2号を使った観測で地殻変動を検出できた。

 また人工衛星による災害情報は国際的なネットワークで共有する仕組みができている。そのため、だいち2号は国内外のさまざまな災害の状況把握に活躍している。15年4月のネパール地震では350キロメートル×350キロメートルの範囲を観測し、地震発生後わずか1時間でネパール政府の防災機関に画像データを提供できた。

「田んぼの水」との区別に課題も


 だが、すべての災害に万能というわけではない。海外では洪水による被害が多いが、レーダーでの観測は農地の水との区別がつきにくいなどの理由で市街地の浸水把握が難しい。

 だいち2号プロジェクトチームの鈴木新一プロジェクトマネージャは「こうした課題を乗り越えるために研究を進めることが必要。また衛星1機では観測条件や観測回数に制約があるため、他の衛星や航空機での観測との連携が不可欠」と強調する。19年度には先進光学衛星を打ち上げる予定で、レーダーと光学カメラによって足りない機能を補完する。

検出精度高度化


 JAXAは3―5年後を目標に、地震や火山の地殻変動の検出技術を基にダムや堤防などに生じる微小な変位を捉える研究を進めている。20年度には、だいち2号をさらに高度化した先進レーダー衛星を打ち上げる予定。

 微小な変位の観測において、だいち2号では5年くらいかけてデータを蓄積する必要がある。「こうした期間を1年程度に縮め、災害が起きる前の異変を発見し、災害の予測につなげたい」(鈴木プロジェクトマネージャ)考えだ。災害から人々を守る技術として、日本の人工衛星は国内外で今後さらに重要度が増していくだろう。
(文=冨井哲雄)

日刊工業新聞2016年3月16日付 科学技術・大学面

COMMENT

過去の衛星画像を分析することで、災害時の行動計画づくりにも役立ちそうです。5年目の「3.11」は過ぎましたが、備えはいつでも必要ですね。

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