「企業として存続できるのか」…ダイハツ不正、サプライヤーから漏れた声
ダイハツ工業が認証試験不正の拡大で全車種の出荷を止め、地域経済や部品サプライヤーに懸念が広がっている。国土交通省は21日、ダイハツ工業本社に法令に基づく立ち入り検査を開始した。本社や工場がある関西と九州、さらに中部では部品サプライヤーが検査の行方を見守りながら、補償や今後の取引に不安を示す。ディーラー(販売店)も顧客離れを恐れる。再生への第一歩として、地域や取引先への丁寧な説明が求められる。
国交省の係官7人が21日、大阪府池田市のダイハツ本社に立ち入り検査した。社員は8時前ごろから続々と無言で出社。不正を調査した第三者委員会が会見を開いた20日、社員も出荷停止の説明を受けた。ショックや不安を示す社員もいたが、再生へ向け総じて前向きだという。
21日午後にはサプライヤーを対象に謝罪や今後の取引を説明するオンライン会議も開催。参加した大手サプライヤー役員は「ダイハツは出荷先の中でも比率が高い。長い取引なので残念だ。誤りを正し再び供給できるようにしてほしい」と求めた。
ほかのサプライヤーからも心配する声がもれる。「全車種出荷停止とは驚いた」と語るのは樹脂系部品メーカー首脳。「売れる車がなくなったということだが、どのくらいの期間、企業として存続できるのか」と話す。金属加工メーカーの経営幹部はダイハツ向けの売上高が「数%ある」という。「この分が丸々なくなると、影響は決して小さくない」と先行きを危惧する。ダイハツの取引部品メーカーは423社に上る。このうちダイハツへの売上高が10%を超える企業は47社。仕入れ先は「補償はあるのだろうか」と不安を訴える。
ディーラーをはじめ地域経済への影響も見逃せない。業界関係者は「売る車がなければ営業マンも辞めてしまうのではないか。年始から年度末まではディーラーにとって書き入れ時。落ちた信頼を早期に戻せるのかという問題もある。『本当に大丈夫か』という一言に尽きる」と懸念する。ダイハツのディーラーの営業マンは「現場の末端には詳しい説明がなく、影響の大きさも想像がつかない。良いお付き合いをしていただいている顧客や取引先の方々に申し訳なく、うまく説明ができずに困る」。自動車ペダル製造の下請け会社に長年勤めた大阪府の男性は「ダイハツは元々地域に密着した会社。トヨタ自動車の子会社となって、無理が重なったのか」と悔しがる。
ダイハツは仕掛かり品の生産を終了後、工場では品質改善活動やマニュアル整備などに取り組む。再生へ向けて一つにまとまり、信頼を取り戻せるのか。サプライヤーも地域も注視している。