島田体制が継続する東芝、経営再建へ取締役候補の顔ぶれ
20日に非上場化する東芝の新たな経営体制が固まった。東芝は14日、島田太郎社長が続投し、同社を買収した国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)、中部電力、オリックスそれぞれから取締役を派遣する人事案を発表した。取締役候補者7人のうち島田社長を除く6人が東芝以外からの登用となる。島田体制の継続が正式に決まったことで、経営再建に向けた戦略の練り直しが本格化する。(編集委員・小川淳)
22日開催の臨時株主総会で新経営体制を正式に決定する。JIPからは馬上英実社長のほか、三菱自動車で副社長を務めた池谷光司副会長ら4人が東芝に派遣され、取締役に就く。馬上氏は取締役会議長を、池谷氏は副社長をそれぞれ務める。
中部電力からは勝野哲会長、オリックスからは井田明一事業投資本部副本部長が東芝取締役に就任する。JIPと出資する企業連合が経営に参画し、東芝の再建に取り組む。また、メーンバンクの三井住友銀行からは小塚文晴上席顧問が専務執行役員に就任する。
東芝は当面、ロームとの協業を発表したパワー半導体や社会インフラ関連の事業を強化しつつ、OT(制御・運用技術)や知的財産などをデジタルの力で融合して稼ぐプラットフォーム(基盤)型企業への変革を進めていく。さらに、人工知能(AI)技術や量子技術なども積極的に取り込む中長期の成長路線を描いている。
島田社長は11月の臨時株主総会で、「(非上場化後は)安定した株主の下、イノベーティブ(革新的)な技術を世界で再び輝かせたい」と決意を述べており、島田体制の継続により、こうした路線を加速する。
主要4子会社の社長も兼務
さらに14日、東芝エネルギーシステムズ(川崎市幸区)や東芝インフラシステムズ(同)など主要4子会社の社長を島田社長が兼務する人事も発表した。東芝は経営の効率化とデジタル戦略を加速するため、4子会社の統合を検討していた経緯がある。
東芝は2015年の不正会計問題の発覚をきっかけに“物言う株主”の出資を受け入れて以降、経営陣が度々入れ替わるなど混迷が続いていた。JIP陣営が実施したTOB(株式公開買い付け)が成立し、株主がJIP陣営に一本化されて東芝は20日に上場廃止となる。
JIP陣営は5年程度での東芝の再上場を視野に入れているとみられる。着実に改革を進めていくためにも、東芝と同陣営が出口戦略を明確に共有する必要がある。
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