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三菱重工・川崎重工・日立など挑む…CO2直接回収「DAC」、脱炭素強化で存在感

三菱重工・川崎重工・日立など挑む…CO2直接回収「DAC」、脱炭素強化で存在感

米テキサス州で建設が進む世界最大のDACプラント。巨大ファンで空気を吸い込み、CO2を年50トン回収(オキシデンタル・ペトロリアム提供)

大気中から二酸化炭素(CO2)を直接回収する「DAC(ダイレクト・エア・キャプチャー)」が、新たな脱炭素技術として登場してきた。米テキサス州では年50万トンのCO2を回収できる世界最大プラントの建設が進む。欧エアバスや米アマゾンなどがDAC由来の「カーボン(炭素)クレジット」の大型購入契約を結んだ。気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で脱炭素強化が議論されたこともあり、DACへの注目が高まる。(編集委員・松木喬)

テキサス州のプラントは、DAC事業者の1ポイントファイブ(ヒューストン)が建設しており、2025年半ばの稼働予定だ。回収技術は、カナダのカーボン・エンジニアリングが開発した。巨大なファンで吸い込んだ空気を水酸化カリウム水溶液に通す方法だ。プラント内で空気中のCO2が炭酸塩となる。その炭酸塩を取り出してCO2に戻し、地中深くに閉じ込める。水素と合成して燃料やプラスチック原料も製造できるが、水素のコストが高く現状では地下貯留が経済的だ。

25年稼働予定のDACプラント(オキシデンタル・ペトロリアム提供)

カーボン・エンジニアリングの国際事業を担当するポール・ケネディ・バイスプレジデントは「我々のDACは簡単に大規模化でき、安価に世界展開ができる」と優位性を強調する。DAC自体は新技術だが、プラントの機材は既成品が多く、調達が容易という。2号機からは「CO2回収量100万トン級が標準になる」(ケネディ氏)という。

1ポイントファイブは22年、35年までに世界各地で70基のDACプラントを建設すると発表した。1基100万トンとすると、日本全体の排出量の6%に相当する年7000万トンのCO2回収が可能となる。強気の計画を打ち出す背景に炭素クレジット市場の動向がある。

同社は、CO2の回収実績に応じて炭素クレジットを発行して販売する。購入した企業は自社の排出量から炭素クレジット分を差し引く。森林によるCO2吸収由来の炭素クレジットもあるが、DACは工業的に回収するので吸収量を測定しやすく、炭素クレジットの信頼性が高い。

プラントは建設中にもかかわらず、次々と炭素クレジットの買い手が現れている。エアバスは3月、40万トンを購入する契約を結んだ。8月にはANAホールディングス(HD)が3年間にわたって年1万トンを購入すると発表。さらに9月には米アマゾンが10年間の長期契約によって25万トンの調達を決めたほか、商船三井も購入を表明した。また、アメリカンフットボールや米大リーグの球団も購入契約を結んでいる。

日本企業も参画、技術開発競争活発に

大企業であるほどCO2削減圧力にさらされており、炭素クレジットの必要性が高まっている。中でもANAが属する国際航空業界は国連機関が定めた削減目標があり、各社は順守が求められる。機体の燃費向上や持続可能な航空燃料(SAF)を利用しても排出削減に限界があり、炭素クレジットにニーズが生まれている。

さらに今後、各国政府もDAC由来クレジットを求めると予想される。50年に向けて省エネルギー化が定着し、再生可能エネルギーも普及すると排出削減の余地が減る。そうなると「実質ゼロ」の手段としてDACの比重が高まるからだ。ケネディ氏も「COP28において国同士が炭素クレジットを取引するルールづくりに注目していた」という。国際交渉で議論されるほど関心が高い。

DACは市場拡大が見込めそうだが、カーボン・エンジニアリングの技術を活用したプラントは広大で安価な土地を必要するため、日本国内に適地は少ない。一方で、日本企業には海外の建設事業に参画できる可能性があり、「我々は大規模プラントの普及を目的としており、日本のエンジニアリング会社も現地パートナーになれる」(ケネディ氏)と話す。

三菱重工業川崎重工業日立製作所、日揮HDなど日本勢もDACの開発に取り組む。省エネや再生エネ、蓄電池、電気自動車、水素などに続いてDACをめぐる技術開発競争も過熱しそうだ。

日刊工業新聞 2023年12月15日

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