半導体関連の巨額目立つ企業の国内投資、土地利用規制の緩和でさらに活発化か
2023年はサプライチェーン(供給網)強靱(きょうじん)化や、グリーン・トランスフォーメーション(GX)など成長分野における事業基盤確保に向けた企業の国内投資が一段と活発化した。特に目立ったのが半導体関連企業による巨額投資だ。
5月には米マイクロン・テクノロジーが広島の半導体メモリー工場などに最大約5000億円を投じると表明。8日には東芝とロームがパワー半導体の共同生産事業に最大総額約3880億円を投資すると発表した。いずれも経済産業省が投資の一部を支援する。
企業の立地意欲が高まる一方、足元で課題になっているのが全国的な産業用地不足だ。経産省によると22年時点の分譲可能な産業用地は11年比で約3割減少、21年比では約5%減った。企業のニーズが急拡大し、用地の造成が分譲のスピードに追いついていないためだ。用地不足が続けば、企業の事業計画に支障が出る恐れがある。
用地不足の解消に向け、政府が10月末の経済対策の目玉として盛り込んだのが土地利用規制の緩和だ。具体的には地域経済の活性化につながる事業を支援する「地域未来投資促進法」の基本方針を見直し、土地開発が制限されている「市街化調整区域」において、自治体が業種を問わず工場や物流、研究拠点の建設許可を出せるようにする。
自治体のまちづくりの方針に沿って指定した区域で高速道路のインターチェンジ(IC)や幹線道路の周辺であることを要件にする。経産省が12月末にも基本方針を告示改正する予定で、企業の用地確保や自治体の企業誘致を後押しする効果が見込める。
24年以降、企業の国内立地を推進する上で懸念されるのが、深刻化する人手不足だ。ある経産省幹部は「地方への工場新設を検討したものの人手の確保が見込めず立地を見送った企業の例が出ている」と明かす。今後は立地環境の整備に加え、省力化支援の重要性がより増しそうだ。
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