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新型プリウスで実を結んだ「アイシン精機」の総力

グループ間の連携を加速
新型プリウスで実を結んだ「アイシン精機」の総力

豊頃試験場(北海道豊頃町)で雪上を走行する新型「プリウス」4WD車

 アイシン精機がグループ連携に本腰を入れ始めた。その第1弾の成果が、ハイブリッド車(HV)向けの4輪駆動(4WD)ユニット。トヨタ自動車が2015年12月に発売した新型HV「プリウス」に採用された。プリウスに4WDが設定されたのは4代目にして初めてだ。アイシンは歴史的に自動変速機(AT)などそれぞれの事業に特化した子会社に責任や権限を強く持たせて成長してきたが、その半面、連携が後手に回っていた。置き去りとなっていたアイシングループの連携がゆっくりと動きだす。

4WD技術、北海道で研究


 北海道十勝地方の東南で太平洋を臨む豊頃町。ここに4WD車を実証するアイシン精機の豊頃試験場がある。4WDは降雪地域の必需品だ。雪道での発進、カーブや坂道の走行時に力を発揮する。実際、新旧のプリウスを雪の上で乗り比べるとカーブの出口付近などで安定した走りを体感できる。

 新型プリウスに採用された電気式4WDユニットは「量産品で3社が共同開発した初めての成果」(藤江直文アイシン副社長)。3社とはアイシン、ATを担うアイシン・エィ・ダブリュ(アイシンAW)、手動変速機(MT)を手がけるアイシン・エーアイ(アイシンAI)。ハウジングやモーター、ギアなどを分担した。

 モーターで後輪を駆動させる同ユニットを小型化し、設置スペースの限られるHVでも搭載可能にした。世界初の量産HVとして97年に登場し、トヨタを代表するHVのプリウスに搭載されたことで、グループ連携の成功事例として弾みをつける。

強すぎた独自色 自動運転技術でも連携めざす


 アイシンは子会社の独立色を強めて成長してきた。アイシンAWの連結売上高が1兆円を超えるなど業界内で存在感の大きい子会社を多数かかえるが、グループ連携は途に就いたばかり。「個別でがんばってきたが、グループで結集してシステム提案をしていく」(藤江副社長)と、現在は転換点にある。クルマの高度化が進み「システムが複雑化してきている」(尾崎和久取締役専務役員)状況下ではグループの有機的な連携が欠かせないためだ。開発のロードマップもグループ会社ごとから、一つに統一した。

 同試験場でも先行開発の段階から自動車メーカーを招き、提案活動を積極化しているという。人工氷結路や日米欧の特徴的な路面を再現した総合周回路などを生かし、顧客目線の開発を進める。

 また運転手の運転不能状態を検知するとクルマが安全を確保して路肩に停止する「緊急路肩退避」や、スマートフォンで駐車を操作する「リモコン駐車」などの自動運転技術も開発中だ。これらの技術もグループ3社やブレーキを担当するアドヴィックスが共同で実用化を目指している。25年に車両全体で12年に比べ30%の燃費改善を狙うなど掲げる目標は高い。
(文=今村博之)
日刊工業新聞2016年3月15日付 自動車面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
子会社がひとつの「城」のようになって横の連携が進まないことはありがちな話。トヨタグループでは近年、グループ間の連携がキーワードになっているようです。人事の面でも、アイシン精機子会社の役員をアイシン本体の役員に登用する例が出てきました(アイシン精機役員からトヨタ役員に昇格する例も)。人材の連携に続き、製品開発での連携も進んでいます。

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