東洋大学で管理職の女性比率が急上昇している理由
DXで学内全体を最適化
東洋大学は現在、学部長14人のうち4人が女性だ。近年は課長補佐の女性比率や男性の育休取得者といった数値も急上昇している。さらに学生らに対する合理的配慮の旗を振るなど、同大の個性を生かしつつ多様な人が活動しやすい環境づくりを進める。2022年にはデジタル変革(DX)の推進方針を策定し、残業や移動の削減を図るなど、効率的な働き方も追求している。(編集委員・山本佳世子)
東洋大学の矢口悦子学長は、2人目の女性学長だ。私立総合大学で初となった1人目の就任は2000年と、他大学を圧倒する早さだった。各大学における女性幹部は近年増えてきた。ただ「シンボリックに女性を打ち出さずとも、男女比や発言内容を自然に意識する“日常的な平等”になってきた」と矢口学長がいうようなケースはまだ少ない。
同大の専任教員における女性比率は理工系は低いものの、全学においては3割弱で安定した状況だ。専任職員の課長補佐における女性比率は22年度で39%。17年度の26%に比べ伸びが著しい。
同大は私立大学で初めて女子学生を受け入れたり、職員の学位取得を後押しする狙いで夜間部をスタートさせたりしてきた歴史がある。背景には設立者の哲学者・井上円了のリベラルな思想があるのだという。
22年にSDGs推進センターを設立し、その中でダイバーシティ&インクルージョン推進プロジェクトを動かす。リーダーの金子律子教授は「同センターでカバーする重点研究推進プログラムでも、研究リーダーに就く女性を増やしたい」と意欲を燃やす。
現在、23―25年度の次世代育成と女性活躍に関する行動計画が動く。この期間に急増する見込みなのが、男性の育児休業取得者数だ。過去2回の計画期間中はいずれも3年間で5人だったが、年5人の取得者が出るなど状況が変わってきた。
専任職員における年次有給休暇の取得率は、21年度で管理職が26%、非管理職は41%。同計画において、これをそれぞれ30%以上、45%以上にする目標を掲げる。同計画には時間外労働時間数の抑制を盛り込んで、状況を把握。個別の数値目標と、制度整備や理解推進活動を連動させ、効果を狙っている。
合理的配慮のいる学内構成員の支援に注力するのも同大の特徴だ。発達障がいを含む障がい者、新型コロナウイルス感染症で精神的に不安になった学生が主な対象だが、職員に対する支援もしている。新型コロナを機に進むDXも生かして活動を後押しする。
22年には総合DX推進事業を策定。既存の制度や業務の前提をデジタルに変え、従来の局所最適化ではなく大学全体の最適化を図る。具体的な柱はDX研修、手続きの電子化・ペーパーレス化、施設設備管理のDX・省エネルギー化などだ。
これらによって事務関係の残業や移動を減らし、大学の本質である教育・研究の充実によりエネルギーをかけられるよう取り組んでいる。