「国際卓越研究大学」制度で衝撃、東北大が唯一の候補に選ばれた理由
世界トップレベルの研究力の実現に向けた「国際卓越研究大学」制度が2023年、本格化した。春の初回公募には東京大学、京都大学など10大学が応募した。このうち東北大学が唯一の認定候補に選ばれ、大学関係者のみならず社会に大きな衝撃が走った。
大学は伝統的に現場の教員ら研究者が、入試など研究以外の業務も多く担って動いてきた。近年は競争的資金獲得や安全衛生など対応すべきことが増え、研究時間が圧迫され、日本の研究力低下を招いたとされる。卓越大は政府の10兆円大学ファンドの運用益から支援を得ることで、大逆転を図るものだ。
初回の応募は指定国立大学から8校、大規模私立大学から2校。研究力を土台に社会変革を起こし、外部資金を獲得しながら独自基金で成長を続けるという運営形態で、25年間と長期での設計が求められた。審査では現在の研究業績に加え、事業活動の年3%成長を実現するプランと組織の意思が重視された。その結果、部局が多様で全学一丸となりにくい東大などが認定されなかった。これにより「求められる本質は何か」を一般社会も考える、これまでにない展開となった。
東北大は複数教員のピラミッド型組織「講座制」から離れ、教授、准教授、助教それぞれが研究室主宰者(PI)として「研究ユニット」を率いる独立型に転換する計画を打ち出した。その結果、現在の全学830研究室が1800ユニットになる。これを研究支援や産学連携の専門職スタッフ1100人増によって支えるとする。
同大が掲げた論文や外部資金獲得などの目標値には「高過ぎる」との声も上がった。しかし大野英男総長は「PIの大幅増と研究に集中できる環境の整備で、実現は可能だと計算した」と説明する。
初回の審査で、変革も大規模大学の一部の試みでは通らないことが明確になった。それだけに24年の公募における、認定候補にならなかった9大学の動向が注視される。