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【ディープテックを追え】農作物の育種速度5倍、スタートアップが独自の品種改良技術で実現へ

通常10年以上かかる農作物の育種を約2年に短縮する-。独自の品種改良技術を強みに高速育種の実現に挑むスタートアップがCULTA(カルタ、東京都小金井市、野秋収平代表)だ。東南アジアをはじめとする海外で、イチゴなどの高単価な農作物での技術の展開を目指す。

カルタは農作物のゲノム解析技術と人工環境の2つの技術を組み合わせて農作物を高速で栽培し、形質の異なる品種同士を掛け合わせ子孫から目的の形質を選別する「交配育種」という従来手法のスピードを早め、品種開発する。具体的には解析した農作物のゲノムから形質を予測し、掛け合わせる。それらの農作物を通常よりも素早く育てることに特化した人工環境で栽培する。これらを複数回繰り返すことで、通常の交配育種よりも「5倍速くすることができる」(野秋代表)という。

目的の品種を育種する方法としては、遺伝情報を書き換える遺伝子組み換えやゲノム編集などがあるが、それらとは差別化する。従来手法のスピードを早めるカルタの手法のメリットについて、野秋代表は「グローバル展開を見据え、従来手法であれば規制などの課題もクリアできる」と話す。

まずはアジアで人気のイチゴに技術を展開する。2024年にもマレーシアで生産・量産を始め、シンガポールで販売する計画だ。25年にはインドネシアやオーストラリアなどにも販売網を広げたい考えだ。海外生産で栽培コストを抑えながら、高品質な農作物を高価格で販売することを想定する。

育種に限らず、現地農家への生産指導を行い同社が全量を買い取る計画だ。野秋代表は「品種を売るだけでなく、品質の高いものをしっかり市場に提供し、日本発のブランドを作っていく」と意気込む。

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