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マンション管理IoTで攻勢かける、パナソニックの差別化策

マンション管理IoTで攻勢かける、パナソニックの差別化策

「モバカン」は共用部のカギも無人で受け渡しできる(クマヒラのスマートキーボックスを活用)

パナソニックはマンションの管理と電気自動車(EV)充電サービスで2024年春から攻勢をかける。IoT(モノのインターネット)による管理サービス「モバカン」に、住人が駐車場利用などをスマートフォンで申請できる機能を追加する。EVでは定額充電サービス「レジチャージ」も始める。住宅インターホンや車向け充電器の提供からアフターサービスまで一貫した事業体制を強みに、顧客開拓を推進する。(大阪・田井茂)

「住人は駐車・駐輪場を使いたい、ペットを飼いたいといった申請がスマホで来春からできる」。パナソニックの社内分社であるエレクトリックワークス(EW)社の小久保隆弘統括は、モバカンの機能拡張をこう予告する。住人は会員制交流サイト(SNS)で必要項目を入力すればマンションの管理会社に申請ができ、管理組合の理事長から可否の連絡をもらえる。現在は紙の申請書でやりとりし、理事長のはんこが必要な場合が多い。

「専用のアプリケーションでなく、普及したSNSを使うので使い勝手が良く、周知されやすい」(小久保統括)。競合サービスもあるが、高い利便性で差別化を図る。 

EW社は22年にモバカンを開始。マンションの管理人不足や国による契約手続き簡素化を追い風にするには、目に見える利便性を示す必要がある。長く手がけるインターホン事業を通じ、住人間の連絡を確実に周知するノウハウも生かす。マンションの管理会社や開発会社に提案し、モバカンの契約数を24年度に数百棟、30年度に1万8000棟にすることを目指す。

EV充電新サービス アフターまで支援

「レジチャージ」による充電(設置イメージ)

一方、レジチャージは月額で電力容量別に1000―2000円、3000円台、5000円台の3コースで調整する。パナソニックは充電器使用契約を管理組合と締結し、充電利用者とサービス契約を結ぶ。スマホのアプリで認証、予約、課金できる。電気代はパナソニックが管理組合に支払う。充電器は6キロワット型の場合、日産自動車のEV「リーフ」ならば8時間で満充電にする。

EW社の大島章義チームリーダーは「充電器とサービスを一体で提供できる。それぞれの事業者が異なる不便がない。アフターの面倒までパナソニックがしっかり見る」と力を込める。充電器の費用は通信機器も含めて20万―30万円かかるため、マンション全戸にコンセントでの安価な充電サービスを望むニーズにも応える予定だ。

パナソニックはEVとプラグインハイブリッド車(PHV)の充電器(モード3)が累計販売5000台で国内トップ。マンション開発会社などと築いてきた強い商流もレジチャージに生かす。モバカンと連携して予約できるようにするなどアップデートを続け、30年度に累計4万―5万契約、充電器も合わせた年間売上高50億―100億円を目指す。

EVのインフラ整備の機運を先取りして先行需要をつかめるか、24年に開始するサービスの真価が問われそうだ。


【関連技術】 パナソニックも注目する元白熱電球メーカーの変身ぶり
日刊工業新聞 2023年11月28日

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