日本一の高さ330m「森JPタワー」が中核…開業した「麻布台ヒルズ」の全容
森ビルが東京都港区で開発を進めてきた「麻布台ヒルズ」が24日開業した。都市再生事業のノウハウを注ぎ込み、「ヒルズの未来形」(辻慎吾社長)に位置付ける大型複合施設だ。約330メートルと日本一の高さとなる「森JPタワー」を中核に、オフィスや商業施設、住宅など多様な施設を設置している。就業者2万人、入居者3500人を想定する新たな街は、首都・東京の国際競争力向上への寄与に関しても大きな役割を担っている。(編集委員・古谷一樹)
麻布台ヒルズは総延べ床面積が約86万1700平方メートル、オフィス貸室面積が約21万4500平方メートル。森ビルが理想とする多様な都市機能を徒歩圏内に集約した「コンパクトシティ」だ。
開発コンセプトに掲げたのは「グリーン」と「ウェルネス」。「グリーン」では、細分化された敷地を取りまとめて大きな敷地を生み出し、超高層ビルを建設。これにより、敷地の約3分の1近い約2万4000平方メートルを緑地として確保した。
もう一つのコンセプトである「ウェルネス」では、医療機関として東京都新宿区から移転した「慶応義塾大学予防医療センター」が開業。最新の医療機器を導入したほか、高い専門性を持つ大学病院のスタッフによる高精度の人間ドックを提供する。新たな要望医療の開発に取り組んでいく。
このほか、教育機関としては都心で最大規模となるインターナショナルスクール「ブリティッシュ・スクール・イン東京」が開校。60カ国以上の国籍を持つ生徒が在籍し、国際感覚に優れる人材を育成するためのカリキュラムを提供する。
ビジネス面では、グローバル企業のニーズを満たす国際水準のオフィスだけでなく、さまざまな施設を整備した。例えば森JPタワーには、入居企業の従業員同士が交流できる場所やベンチャーキャピタル(VC)の集積拠点を設けている。
麻布台ヒルズにはこのほかにも、高級ホテルやフードマーケット、デジタルアートミュージアムなどさまざまな施設を設置している。仕事の場を提供するだけでなく、人やモノ、情報、投資などを呼び込み、街のにぎわい創出につなげるための仕掛けづくりといえる。主なターゲットとして想定しているのは富裕層だ。特に海外から優秀な人材を呼び込むことを狙っている。
森ビルのシンクタンク「森記念財団」が毎年実施している「世界の都市総合力ランキング」によると、東京は2022年の順位でロンドン、ニューヨークに次ぐ3位だった。国際的な都市間競争を勝ち抜いていく上では、ビジネス面の環境整備に加え「交通や環境、文化といった多様な分野を融合させながら、都市としての総合力を高めることが必要」(森ビル)とみている。
東京の国際競争力向上は、森ビルにとって長年にわたる街づくりの重要テーマだ。麻布台ヒルズにおける教育や生活環境の充実は、コンパクトシティの機能強化に向けた新たな試みとして、今後の再開発事業にも大きな意味を持ちそうだ。