ハノーバーメッセで見せつけたドイツ新製造業革命の“本気度”―現地レポートから

インドのモディ首相ら海外から政府要人や企業首脳続々、世界に存在感示す

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 モノのインターネット(IoT)による新たな産業革命「インダストリー4・0(I4・0)」の実現に向け、ドイツが官民を挙げて取り組んでいる。4月13―17日にかけて独ハノーバーで開かれた産業見本市「ハノーバー・メッセ」は、I4・0一色。シーメンスやSAPなど独を代表する企業が一斉に関連の生産システムを展示した。会場を訪れた日本の半導体・電子部品商社首脳は「I4・0にかける独の力の入れようが伝わってきた。当社も早急に対応しなければ」と焦りを見せる。

 【印首相ら来場】
 世界から6500社を超える企業が出展した今年のハノーバー・メッセ。あらゆる場所に“インダストリー4・0”の文字が躍った。インドのモディ首相ら、海外から政府要人や企業首脳といったエグゼクティブも多く来場した。前夜祭では独メルケル首相が30分にわたって講演。その3分の1をI4・0に関する説明に割き、独の「本気度」を国内外にアピールした。

 I4・0はIoTを使った新しいモノづくり。産業機械やロボットにセンサーを取り付けて工場間やサプライヤー、消費者までもネットでつなぎ情報を共通化する。生産を効率化したり、カスタム品を量産品のような低コストで生産したりすることを狙っている。独はI4・0を産業競争力を高める切り札に位置付け、国策としてその実現に取り組んでいる。I4・0の旗振り役の1社で、最大の出展スペースを確保したシーメンスは、消費者の注文からオーダーメードの香水を生産、供給できるシステムを発表。多くの来場者の関心を集めた。

 【自動で加工完成】
 独フエニックス・コンタクトは3次元(3D)CADメーカーの独EPLAN(イープラン)、制御盤メーカーの独RITTAL(リタール)と連携した生産システムを披露した。制御盤を設計する際に使うイープランの3DCADソフトに、フエニックスが手がける端子台などの製品情報をあらかじめ登録しておき、設計者が設計データを送れば制御盤の加工や組み立てなどが自動で完成する。短期間で異なる仕様の制御盤を生産することが可能になる。3社共同のプロジェクトとして実用化を目指している。

 こうしたIoTを使った新しいモノづくりは、独のI4・0だけでなく、米国でもGEが主導する「インダストリアル・インターネット」が動きだした。先行する米独の動きに対し、日本の製造業関係者の多くは危機感を募らせる。

 【今年に入り指示】
 実際、メッセ会場ではI4・0の実態をつかもうとする日系企業関係者の姿があった。視察に来ていたある日本の計測機器メーカー担当者は「今年に入って、会社から全社員に対し早急に(I4・0に関する)情報を集めるよう指示が出た」と打ち明ける。 独や米に有利な形でモノづくりの標準化といった基盤(プラットフォーム)が形成されれば、モノづくり力で差別化してきた日本勢は取り残され、競争力が低下することにつながりかねないからだ。
 
 一方で「部分的には日本でもすでに実現できている技術もある。標準化など業界を挙げた取り組みを急げば、まだ独米(の動きに)に間に合う」(日系産業機器メーカー幹部)という意見も少なくない。製造分野で世界的に優位性を維持してきた日本。モノづくりが根底から変わろうとする中で、具体的な戦略に打って出るための正念場を迎えている。
(現地取材=下氏香菜子)

2015年04月24日 電機・電子部品・情報・通信面

COMMENT

加藤百合子
エムスクエア・ラボ
代表

ものづくり国でも違いが鮮明にでてしまいました。残念ですが仕組み作りが得意なドイツと苦手な日本。農業においても同じです。ICTやロボットという単機能では生産効率向上に関する効果は限定的。ステークホルダやこれまでの競合含めて、何で誰と闘うべきかを整理し、共有すべき機能はプラットフォーム化すべきです。内需が急速に縮小する中で早く部分最適な思考から、全体最適へと移行できたら、日本のものづくり力でまだまだ世界を引っ張ることができると思います。

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