EMC買収、ベローをNTTに売却。デル、M&A長期戦略の損得勘定
8年間で40社以上買収、「ハイブリッドクラウド」に照準
NTTが米デル傘下のITサービス会社を買収する交渉が大詰めを迎える。実現すれば買収額は4000億円超の見通しで、グループでは過去3―4番目の大型案件となる。国内通信市場が伸び悩む中で安定した収益が見込める北米で事業基盤を強化し、NTTのブランド力を高めつつ、中長期の柱戦略に位置づける海外での収益拡大を狙う。
一方の米デルは数カ月前から、傘下の米ペロー・システムズを売りに出していた。これに先立ち、デルはストレージ(外部記憶装置)大手の米EMCの買収に約670億ドル(約8兆円)を投じることで合意しており、今回の売却資金はEMCの買収に充当するとみられる。
デルがペロー・システムズを買収したのは09年。パソコン中心から法人向けシステム事業への転換を図るデルにとって、ペロー・システムズはまたとない買い物だった。デル創業者のマイケル・デル会長兼最高経営責任者(CEO)はここ数年、米国でのイベントなどで講演する際に、いつもペロー・システムズの案件を成功例として挙げていたほどだ。
ただ、ITコンサルティングだけでは成長戦略は描けない。起死回生の一手としてデルCEOは13年に総額244億ドルで自社株買いを実施し、プライベートカンパニー(非公開会社)となり、長期的な視点で成長戦略を描いてきた。
企業買収は米国では珍しいことではないが、デルは過去8年間で2兆円以上を投じて40数社を買収し、ポートフォリオを拡大。15年にはEMCの買収に打って出て、業界内を驚かせた。
ペロー・システムズが持つ顧客基盤を踏まえると、売却しなくてもよいようにも思えるが、EMCの買収資金が当初の想定よりも膨らんだ模様。資金調達を含むポートフォリオの入れ替えという観点で天秤(てんびん)にかけると、売却という結論に至ったようだ。
デルは米アマゾン・ドット・コムのようなパブリック(共有型)クラウド事業からは一線を画し、企業固有のプライベート(自前運用)クラウドに自社製品供給の軸足を置いている。パブリックとプライベートを混在させた「ハイブリッドクラウド」に照準を合わせ、成長戦略を描く。
デルにとってNTTグループは有力な製品供給先となり得る。ペロー・システムズの売却を機にNTTグループとの関係を深められれば一石二鳥といえる。
ベローは事業改革の成功モデル
一方の米デルは数カ月前から、傘下の米ペロー・システムズを売りに出していた。これに先立ち、デルはストレージ(外部記憶装置)大手の米EMCの買収に約670億ドル(約8兆円)を投じることで合意しており、今回の売却資金はEMCの買収に充当するとみられる。
デルがペロー・システムズを買収したのは09年。パソコン中心から法人向けシステム事業への転換を図るデルにとって、ペロー・システムズはまたとない買い物だった。デル創業者のマイケル・デル会長兼最高経営責任者(CEO)はここ数年、米国でのイベントなどで講演する際に、いつもペロー・システムズの案件を成功例として挙げていたほどだ。
ただ、ITコンサルティングだけでは成長戦略は描けない。起死回生の一手としてデルCEOは13年に総額244億ドルで自社株買いを実施し、プライベートカンパニー(非公開会社)となり、長期的な視点で成長戦略を描いてきた。
企業買収は米国では珍しいことではないが、デルは過去8年間で2兆円以上を投じて40数社を買収し、ポートフォリオを拡大。15年にはEMCの買収に打って出て、業界内を驚かせた。
NTTグループとの関係強化は一石二鳥
ペロー・システムズが持つ顧客基盤を踏まえると、売却しなくてもよいようにも思えるが、EMCの買収資金が当初の想定よりも膨らんだ模様。資金調達を含むポートフォリオの入れ替えという観点で天秤(てんびん)にかけると、売却という結論に至ったようだ。
デルは米アマゾン・ドット・コムのようなパブリック(共有型)クラウド事業からは一線を画し、企業固有のプライベート(自前運用)クラウドに自社製品供給の軸足を置いている。パブリックとプライベートを混在させた「ハイブリッドクラウド」に照準を合わせ、成長戦略を描く。
デルにとってNTTグループは有力な製品供給先となり得る。ペロー・システムズの売却を機にNTTグループとの関係を深められれば一石二鳥といえる。
日刊工業新聞2016年3月9日「深層断面」から抜粋