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第一三共はメルクと契約…新薬開発・販路拡大へ製薬の提携・買収が活発化

第一三共はメルクと契約…新薬開発・販路拡大へ製薬の提携・買収が活発化

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製薬企業は特許切れに備えた自社製品の拡充や、世界で効率的に販路を拡大するため、提携や買収を活発化させている。新薬候補の獲得競争激化により、買収や提携の費用は増大傾向にあり、一時的に業績に及ぼす影響も大きい。製品開発に巨額を投じる製薬業界では迅速な商品化や持続的な成長には提携・買収が欠かせなくなってきており、それに伴いパートナー選定の重要性も増している。(安川結野)

第一三共は10月、米製薬大手メルクと抗体薬物複合体(ADC)の全世界での開発と商業化契約を締結した。ADC研究開発費用をメルクと分担することでコスト負担が減るため、24年3月期の営業利益予想を4月公表時から150億円上方修正した。ADCは第一三共が開発に集中投資してきた期待の大型薬で、現在開発中の3製品については今後、メルクと共同で開発・販売を行う。

提携の背景について大和証券シニアアナリストの橋口和明氏は「医薬品の開発や販売を1社だけで行うことは少なくなっている。提携は、開発や販売網のリソースの有効活用やリスク低減が期待できる」と説明する。

またメガファーマ(巨大製薬会社)は、他社が持つ利益が見込める有力な医薬品を積極的に自社製品群に取り入れる傾向にある。今回の提携では「特許切れを控えた抗がん剤『キイトルーダ』を補う製品を獲得したいというメルクの狙いもある」(橋口氏)という。商業化した際の利益は折半になるが、米国での存在感が大きく医療機関との関係も深いメルクと提携することで、研究開発が円滑に進む効果も期待できる。

一方、買収により24年3月期の全利益段階で見通しを下方修正したのがアステラス製薬だ。主力の抗がん剤「イクスタンジ」の特許切れを補うため、5月に約8000億円も投じて米バイオ医薬品会社のアイベリック・バイオを買収し、地図状萎縮(GA)を伴う加齢黄斑変性(AMD)の治療薬「アイザーヴェイ」を獲得した。買収に伴い販管費や研究開発費などのコストを計上し採算が悪化したほか、無形資産償却費も発生し、業績予想の下方修正となった。

ただ、治療薬そのものへの期待は高く、岡村直樹社長は「発売から1カ月、期待に沿った立ち上がり」と強調する。ピーク時売り上げでも2000億―4000億円を見込んでおり、今後、製品の価値最大化に向けた開発や営業活動が重要となる。

橋口氏は「医薬品は製品のライフサイクルが短い。開発の成功確率が高くない中で、理想のタイミングで新薬を出せるとは限らず、そのため買収や提携が必須となってきている」と指摘する。持続的に成長していくには自社のリソースだけではスピードが追いつかないという中で、提携や買収のターゲットを見極め、成果を着実に出していくことが求められる。

日刊工業新聞 2023年11月17日

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