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東京製鉄・トピー工業…普通鋼電炉7社が通期上方修正も、残るリスク要因

東京製鉄・トピー工業…普通鋼電炉7社が通期上方修正も、残るリスク要因

東京製鉄公式サイトより

普通鋼電炉12社(非上場2社含む)は販売数量が低迷する中で鋼材スプレッド(原料と製品の価格差)が改善し、2023年4―9月期の経常利益は7社が増益、5社が減益だった。販価改善やコスト低減が進むとし、24年3月期の経常利益予想は東京製鉄、トピー工業、共英製鋼、合同製鉄、大和工業、東京鉄鋼、中部鋼鈑の7社が上方修正した。ただ鉄スクラップの価格は高止まりし、エネルギー価格や物流24年問題によるコストの上昇もリスク要因といえる。

電炉材の主用途である建築・土木分野の需要が低迷を続ける中、「輸入材製品と競合して販売量が減少」(合同製鉄)、「中国経済の回復遅れなどで世界的に鋼材需要は軟化傾向」(大和工業)という状況にある。

電炉各社はかねて製品単価の是正に取り組んでおり、主原料であるスクラップの価格変動が落ち着き、スプレッドは改善している。鋼板や形鋼を扱う東京製鉄は4―9月期にスプレッドが前年同期比でトン当たり2200円拡大し、24年3月期の経常利益予想を従来比15億円上振れした。

トピー工業では、利益を重視したプロダクトミックスの最適化などの成果が表れている。

棒鋼メーカーでも同様の傾向だ。共英製鋼は「一定の受注残を抱え、想定以上のスプレッド拡大が見込まれる」(広冨靖以社長)。

合同製鉄は「鉄筋は回復が遅れがちながら関東圏で底堅く、線材の落ち込みをカバーしている」(内田裕之社長)とし、品種による状況がうかがえる。

米国などで生産展開する大和工業は、安価な中国材の流入による影響を懸念しつつ「円安や米国金利上昇は業績の押し上げ要因」(古寺良和常務執行役員)とし、業績への寄与を見込む。

中山製鋼所、大阪製鉄、北越メタルは経常利益予想を据え置いた。中山製鋼所ではトラブルがあった電炉は再稼働したが、通期では「円安急伸によるスラブ(半製品)購入価格上昇などのコストアップ要因」(中村佐知大専務)も織り込んでいる。


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日刊工業新聞 2023年11月16日

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