古河電工は下方修正…電線4社の通期予想、カギ握るDC需要
電線大手4社の2024年3月期連結業績予想は、2社が増収営業増益、2社が減収営業減益を見込む。自動車の生産回復を受け、車用ワイヤハーネス(組み電線)の需要は堅調だ。一方、北米のデータセンター(DC)需要低迷による顧客の投資抑制や在庫調整が光ファイバーケーブル事業に打撃を及ぼしており、24年度以降の回復が見込まれる。長期では通信量の増加や生成人工知能(AI)の普及がDC需要の追い風になりそうだ。
住友電気工業は自動車用のワイヤハーネスが日本や北米で伸び、好業績をけん引する。電気自動車(EV)関連も電線などで需要を創出している。半面、中国ではワイヤハーネスの販売が減少。現地のEVメーカーが勢いを増し、苦戦する日系自動車メーカーの影響を受けている。
北米でのケーブル・通信機器も低調。インフレと金利高で巨大IT企業がDCの投資抑制や人員削減を行い、需要が落ちている。ただ井上治社長は「DC向けの光通信部品は7―9月から回復している」と説明する。
金利上昇に伴う利払いとベースアップによる人件費は23年度に、前年度比でそれぞれ100億円以上増える見通し。24年3月期は営業利益を初の2000億円に乗せる一方、利払い増などで当期利益は減益を予想する。為替の円安は業績を押し上げるが、金利高やコスト高が痛手となる。インフレは長期化が見込まれ、収益の足かせとなりそうだ。
古河電気工業は24年3月期の営業利益を5月公表比190億円減の50億円、当期利益を同130億円減の0円に引き下げた。想定以上に北米・中南米のDC需要低迷が長期化し、売上高の大幅な落ち込みが各利益段階に響いている。森平英也社長は「今が底との認識で、24年度に回復を見込む」と語る。
汎用ケーブルの値下げ圧力も強まる中、コスト削減や製品ミックスの改善で巻き返しを図る。現状改善に向けて低採算拠点の統廃合を実施。メキシコ拠点の拡充に加え、独からモロッコへの生産移管など採算性を高めるための施策を実行中だ。
フジクラはDC需要が踊り場に入ったことに加え、スマートフォンをはじめとする電子機器全般の需要落ち込みが23年度下期も続くと予想する。ただ円安傾向は追い風で、24年3月期の経常利益を5月公表比10億円増の560億円に引き上げた。今後は従来の光ケーブルより細径・軽量化を実現した「SWR/WTC」を米国や英国に加え、中東・欧州・豪州でも拡販する方針だ。
SWCCは建設関連需要が想定よりも上振れたことを踏まえて24年3月期の各利益段階を上方修正した。
電線各社は短期では北米のDC需要低迷が業績に影響するものの、中長期では通信量増加などに伴うDCの需要拡大がプラス材料として期待される。
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