「ルンバ」のコア技術は軍事用。日本も大企業がロボット活用の社会実装を急げ

文=三治信一朗 米国はイノベーションのトライアングルを回し始めている

  • 0
  • 0
軍事用をベースにした除染作業ロボ(米アイロボットの「ウォーリアー」)
 現在、米国では大統領選挙で盛り上がっており、連日、討論の様子がテレビで放映されている。世間の関心も、誰が米国のリーダーとしてふさわしいかについて真剣に考えているようだ。

 ここは誰がふさわしいかを議論する場ではないが、ある種の不平不満、鬱屈した感情がたまっていることを感じた。米国では、誰がリーダーになっても変わらないという閉塞(へいそく)感も感じた。今までの米国にはなかったような印象を持っている。

国防総省、巨大企業、中核的大学の三角形


 米国におけるロボット開発の中心は、国防総省といった軍事関連、生産性を上げるために必要な巨大企業、それにイノベーティブな研究を行う中核的大学の三つである。日本のように、ロボットメーカーが産業用もサービス用もそれなりの数を供給し、政策支援も受けつつ進められているわけではないようだ。

 まず、軍事関連であるが、掃除ロボットのルンバを開発したアイロボットが有名だ。地雷除去から無人での攻撃ができるロボット、それから、救護用のロボットまで幅広い軍事関連ロボットの開発を行っている。

 民生用のルンバに資源を集約するために、軍事部門の売却を検討しているということだが、技術のコアが軍事用技術から派生したのは明らかである。巨大企業の取り組みとしては、アマゾン・ドット・コムの物流現場でのロボット活用、グーグルの自動運転自動車に対する投資が有名である。

一貫した産業政策が必要。次の主戦場は物流やスマートシティー


 物流現場の生産性向上、スマートシティー、さまざまな場面でのロボット技術の社会への実装は巨大企業中心で進められている。また、核心的技術は大学発であることが多い。マサチューセッツ工科大学(MIT)、カーネギーメロン大学、スタンフォード大学といった中核的な研究機関は企業からも政府からも潤沢な資金を得て研究をリードしている。

 一方で、手厚さが見られないのが中小企業への産業振興であった。大統領選でも雇用回復、生産の国内回帰はどの候補者も主張しており、むしろ雇用削減、人員削減につながるイメージを持つロボットは敬遠されがちの印象を持つ。産業用ロボットのプロトタイプが生まれたのは米国であったが、それが現場で普及し、ロボットメーカーが育ったのが日本であるという歴史を繰り返す可能性もあると直感した。

 IT革命がそうであったように、産業は複層的であり、結果的に多様な雇用も生み出す。現時点の米国ではロボットの技術波及の道筋が見通しづらかった。改めて、一貫したロボット産業政策の必要性を感じた。
<略歴>
NTTデータ経営研究所 事業戦略コンサルティングユニット 産業戦略チームリーダー シニアマネージャー

日刊工業新聞2016年3月11日 ロボット面

COMMENT

政年佐貴惠
名古屋支社編集部
記者

人型ロボットの競技会が話題となったDARPAも軍事用研究が元になっている。実証フィールドも多く、資金面も含めて日本とは規模が比較にならないという研究者の嘆きをよく聞いた。だからこそ政策・企業・大学や研究機関が三位一体となって、効率よく社会実装を進めていくことが必要だろう。

関連する記事はこちら

特集