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「踊れるロボット」が駅案内…DXでサービス向上する近鉄の本気度

「踊れるロボット」が駅案内…DXでサービス向上する近鉄の本気度

大和西大寺駅で実験中の案内ロボット

近畿日本鉄道はデジタル技術などを活用したサービス向上を進めている。奈良県の大和西大寺駅や学園前駅では人工知能(AI)を活用したデジタルサイネージ(電子看板)やロボットでの案内を実験しており、業務の効率化により人手不足をカバーする狙いだ。ほかにも、クレジットカードなどのタッチ決済改札機導入や海外営業でインバウンド(訪日外国人)対応も強化し、2023年度の営業利益を22年度比90・1%増の216億円を見込む。(大阪・市川哲寛)

AI活用デジタルサイネージは学園前駅の改札口に設けて実験している。切符や乗り換え、運賃、駅施設や駅周辺観光施設などを案内する。利用者の問い合わせ内容をAIで音声認識し、自ら回答するか、駅員を呼ぶか、オペレーターに接続するかを判断する。

AIを活用して乗り換え案内などを行うデジタルサイネージ

サイネージに登場するキャラクターを人に近い大きさとして「駅員がいるような安心感を与える」(近鉄)のを狙った。日本語や英語、中国語、韓国語の4カ国語に対応する。当面の間試験して課題や効果を検証、他駅にも広げるか検討する。

同様の仕組みの案内ロボットは大和西大寺駅にも設置している。多くの路線が乗り入れる複雑な駅での乗り換え案内や、駅ビルのある商業施設のサービス情報提供などで効果的な案内ができるか実験中だ。「踊れるロボットで見た目にインパクトある」(同)ことで多くの利用を促す。

同駅ではAIカメラを改札口に設置して、車いす使用者や白杖(はくじょう)を検知し、駅員が乗車まで介助するサービスも行っている。介助が不要と言われた場合でも乗車までを見守る。導入当初は白杖とビニール傘を間違えて検知することもあったが、データ蓄積などで検知精度を高めている。同駅を、20年のリニューアルを機に「新しいことに挑戦してモデル駅にしたい」(同)と位置付けている。

また、タッチ決済改札機は24年内にほぼ全駅に導入する。切符購入や集積回路(IC)カードへのチャージをせず、クレジットカードやスマートフォンなどで改札を通過して乗車できるようになる。海外では導入が進んでおり、外国人の利用増にもつながる。外国人のニーズに合わせた列車や沿線スポットを海外旅行会社にPRするほか、アジアなどでの旅行展示会に出展し需要を取り込む。

全社で人員が減る中デジタル技術などで効率化しつつ、サービスの質を落とさない取り組みを進めている。

日刊工業新聞 2023年11月10日

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