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MonotaROの進化するPBづくり

種類、質、価格の多様化を進め顧客ニーズの取りこぼし防ぐ
MonotaROの進化するPBづくり

プライベートブランドの電気送風機

 小売りや卸売企業が独自に企画販売するプライベートブランド(PB)商品。利益率向上や差別化戦略として導入する企業が多いが、同業他社もPBを扱っていれば差別化は容易ではない。間接資材ネット通販のMonotaROは、PBの種類、質、価格の多様化を進め、顧客ニーズの取りこぼしを防いでいる。

 「簡単に商品化できるものでは差別化につながらない」。高橋宏昌商品部門商品開発グループ長は、PB競争が新たなステージに入っていることを示唆する。同社のPB商品は約32万。競合する通販会社やホームセンターも手がける軍手などの汎用的なPBがある一方で、電気用品安全法(PSE)の認証が必要な電気製品や、高圧ガス規格に対応した家庭用エアコン冷媒など“規格モノ”PBも扱っているのが特徴だ。

 PBは基本的に安さを求められるが、商品やトレンドによっては高性能指向が高まっているものもあり、ニーズは多様かつ変化している。このため同社では、為替や人件費、顧客ニーズに合わせ、生産委託先や生産国を柔軟に変化させる仕組みをとっている。要となるのがサプライヤー開拓だ。

 同社は国内外で商談会を開催している。中国で年2回ある大規模な間接資材の展示会にも毎回10人を一挙に派遣。「行けば何かが見つかる」(高橋グループ長)と貪欲に新規サプライヤーを開拓する。近年は特に円安と要求品質の高まりで、国内生産への切り替えが進んだ。また、原材料費の比率が高い製品は「サプライヤーの材料の仕入れタイミングで製品供給価格が異なる」(同)ため、発注ごとに見積もりし、瞬間的に適地を選び取る。

 「為替、人件費、輸入諸経費、関税、輸送コストなどグロス(総計)でみる」(同)ことで変更するメリットの有無を判断。顧客ニーズの見極めも重要で、トレンドとして品質や安全性重視の傾向が高い商品はコストが高めでも国内や台湾へ移す傾向が強いという。

 ただ、サプライヤーの変更は品質のリスクも伴う。ネット通販の特徴として、顧客が書き込む商品レビューもあることから、品質の甘さは売り上げにすぐ跳ね返る。このため同社では、社員か現地エージェントのどちらかが現地工場を視察し、事前に提出されたリポートとの差異を厳しくチェックする。初回ロットの現地検品はもちろん、2回目以降も毎回日本国内で抜き取り検査し、安全に関わる商品は第3者機関での検査体制も敷いている。

 同社はこれまで、ナショナルブランド(NB)で新規カテゴリーに参入し、その売れ筋商品をPB化することの繰り返しで成長してきた。PB化は顧客の選択肢と満足度を拡大するだけではなく、NBブランドメーカーとの価格交渉力を高めるためのものでもあるという。成長戦略に欠かせないPB製品の重要性は高く、より多様化する方向にある。
2016年3月11日 モノづくり
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
32万ものPBのハンドリングは容易ではないと思いますが、それが同社の強さの源泉になっているのかも。

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