理研が量子計算機2台導入、ハイブリッドシステム開発でソフトバンクが事業化
理化学研究所計算科学研究センターは、超電導型とイオントラップ型の量子コンピューターを2台導入し、スーパーコンピューターと量子コンピューターのハイブリッドシステムを開発する。ソフトウエアをモジュール化して構築し、原理や特性の異なる量子コンピューターに対応できるようにする。2026年度に運用開始し、28年度に試験サービスを始める。ソフトバンクが事業化する。
理研の和光地区(埼玉県和光市)にイオントラップ型、神戸地区(神戸市中央区)に超電導型の量子コンピューターを導入する。どちらも市販機で、それぞれクオンティニュアム(東京都千代田区)と米IBMが供給するとみられる。
超電導型の量子ビット数は100個以上になる。神戸地区にはスパコン「富岳」が設置されており連携させやすい。量子コンピューターは原理や機体ごとにエラーの発生の仕方が変わる。そこで特性に合わせたエラー緩和処理や回路の最適化処理を開発。ソフトをモジュール化して用途に合わせて組み替えられるようにする。
実機の稼働は25年度になる。それまではクラウド経由で購入機と同じ装置を利用してソフト開発を先行させる。理研は市販機と開発中の機体と、事業化段階の異なる装置を運用することになる。ソフトや機能の標準化や接続性確保など、事業化に向けて重要な知見が得られる。
理研とソフトバンクの2者で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業に採択された。東京大学と大阪大学も共同実施者となり、両大学のスパコンと連携する。開発期間は5年間。NEDO事業後はソフトバンクが事業を展開する構想。量子コンピューターの実用化を加速させていく。
日刊工業新聞 2023年11月08日