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パナソニック、ドローン検知システム受注開始―既製品カスタマイズも

部品の社外向け販売にも力を入れる
パナソニック、ドローン検知システム受注開始―既製品カスタマイズも

7日から受注を始めたドローン検知システム

 飛行ロボット(ドローン)関連の世界市場は、2015年の約5000億円から20年には1兆2000億円以上に成長する見通しだ。国内市場も15年の16億円から20年は180億円超と、急拡大が予測される。パナソニックはカメラなど既存部品をドローン用にカスタマイズして社外に供給するなど、需要拡大の波に乗るべく事業展開を進めている。7日には、セキュリティー用のドローン検知システムの受注も始めた。

 受注開始した検知システムは、32個の高感度集音マイクと旋回式カメラなどを連動。人間の目や耳で発見できない約300メートル離れたドローンの飛行音から位置座標を検出し、自動で追尾撮影する。3台あれば全方位の検出が可能で、夜間は近赤外線を投射して白黒撮影できる。

 15年春以降、首相官邸のドローン落下などの事件が相次いで発生。同年12月には国の重要施設周辺などを飛行禁止区域とするドローン飛行規制法案が施行された。パナソニックもドローン事故や悪用への対策の必要が高まったことを受け、急きょ、開発に取り組んだ。

 検知システムは監視システムなどで培ったマイクやカメラなどの既存技術を基に、改良を加えて新しいシステムを組み上げた。発売初年の販売目標は50台にとどまるが、「飛行経路の追跡などの可能性はある」(尾崎祥平パナソニックシステムネットワークス・センシングソリューション事業推進部部長)と業務用途の広がりを期待する。

 同社はカメラやつり枠(ジンバル)などドローン用部品の社外向け販売にも力を入れている。車載カメラが好調な社外向け光学部品ではドローン用カメラの需要が加わり、18年度売上高は14年度比10倍の200億円を目標に掲げる。需要が増えればドローン専用カメラモジュールの製品化も検討する。

 部品はほかに、3軸アクチュエーターでカメラ全体を動かしてドローンの振れを吸収するスタビライザーも開発済み。高精度ズーム機能の実現に役立つ。完成品はフルハイビジョンの4倍の解像度を持つ「4K」映像を撮影できる放送用カメラで、ドローン搭載可能な本体約2・7キログラムの軽量機種を発表した。

 同社はドローンそのものの開発は「未定」とするが、電子・光学部品のほか、通信、画像処理など既存技術の応用すれば成長市場を開拓できる。安定収益が見込める業務用市場が見つかれば、パナソニック製ドローンが登場しても不思議はない。
(文=大阪・錦織承平)
日刊工業新聞2016年3月11日 ロボット面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ドローンは比較的安価で最近のモデルは誰にでも操作できる。小型なため検知しにくいし、遠隔操作のため操縦者の特定が難しい。容易に改造もでき、悪用が簡単にできることが人々に不安を与えている。今回のパナソニックの検知技術は、健全なドローン活用にとって必要な技術といえる。だが、不審なドローンへの対策には検知だけでは足りない。不審なドローンを電波的に妨害する、操縦者を特定する、物理的にドローンを捕獲する、捕獲が難しい場合は撃墜する、といった段階ごとの対応が必要で、検知はそれらの最初の段階に過ぎない。パナソニックが今後、妨害や操縦者特定といった技術を出してくるかが注目のポイントだろう。加えて、得意の画像技術の応用例としてドローン本体の製造にも参入するかも焦点だ。 (日刊工業新聞社編集局第一産業部・石橋弘彰)

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