ファスナー・ボタンも再生…アパレル業界で進む“脱”大量生産・大量廃棄
ファスナー・ボタンも再生
自然循環や環境負荷軽減に力を入れる服飾部品メーカーが増えている。アパレル業界では欧州を中心に、流行に合わせて大量生産・大量廃棄する従来のビジネスモデルからの脱却が進む。欧米の一部アパレルメーカーでは、部品メーカーや染料メーカーに対しサステナビリティー(持続可能性)への配慮を求める企業があり、日本国内のメーカーも対応が迫られる。(田中薫)
YKKは米アパレルメーカーのパタゴニアと協力し、ファスナーを回収する仕組み「zip TO zip」を構築した。衣服のリサイクルは数多く行われているが、布地と素材が異なるファスナーやスナップボタンは衣服からの取り外しや分別が難しく、ほとんどが廃棄されていた。
zip TO zipでは自社製品の修理を行うパタゴニア鎌倉リペアセンター(神奈川県鎌倉市)で、製品の補修時にファスナーをリサイクルしやすい状態に分別・回収する。それをYKKが引き取り、素材の状態に戻して再度ファスナーのスライダーやテープの原料として利用する。
回収の仕組みを作る上で重要なのは、補修作業の分解時や工場で不良品として発生する不要なファスナーを、リサイクルしやすい状態にして引き渡す点にある。YKKは布地と同じ素材でできた分別不要なファスナーや、衣服から取り外しやすいスナップボタンの開発など、リサイクルしやすい製品の開発に取り組んでいる。しかし、現時点ではアパレルメーカーや工場の協力は欠かせない。担当者は「第2・第3のパタゴニアのような共同パートナー企業が出て来てくれれば」と話す。
エコログ・リサイクリング・ジャパン(広島県福山市)は、服飾メーカーや素材メーカーなど46社が参加するリサイクルネットワークを構築する。企業の制服などをエコログが回収し、ポリエステルペレットなどに再素材化する。その後、参加企業が材料を用いて衣服や雑貨などを製造する。
1社単独ではなく、多業種にわたるネットワーク内で再素材化から製品化までするため、衣服やボタン、軍手、鉢植えなど多様な製品を作ることができる。会員企業は「顧客でもありパートナーでもある」(エコログ担当者)という。
第三者機関による認証の需要も高まる。繊維製品や薬剤、工場などの安全性を示す国際認証「エコテックス」の全世界における2022年度の発行数は、18年度比8・41倍の4万3786件だった。中でも製品と製造過程の安全性が証明され、製造に関わったすべての拠点が2次元コードから確認できる「エコテックスメイドイングリーン」の発行数は同比2・03倍の1万975件で、海外企業が中心に取得している。
同認証の国別の取得状況は非公開だが、国内で検査を行うニッセンケン品質評価センター(東京都台東区)によると「サプライチェーン(供給網)が複雑な日本ではまだまだ少ない」。作る責任・使う責任を果たしたいと真剣に取り組む(国内)企業に期待したい。