「iPhone新機種」効果でマイナス幅縮小も、低調な電子部品出荷で増す先行き不透明感
電子情報技術産業協会(JEITA)が31日発表した日本メーカーによる8月の電子部品世界出荷額は、前年同月比2%減の3827億円だった。マイナスは10カ月連続。ただ為替の円安が再加速したことや、米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の新機種向け出荷の伸びによる押し上げ効果でマイナス幅は7月より縮小した。一方、足元では全米自動車労働組合(UAW)のストライキなどの影響で先行き不透明感も増している。
スマホなどの中で電気を一時的に蓄えたり放出したりして回路のノイズを除去し、電圧を安定させるコンデンサーは同1%減の1264億円。前年同月の実績は超えられなかったものの、マイナス幅は7月に続き縮小した。コンデンサーと組み合わせて電流の波をなだらかにするインダクターも同1%減の275億円だった。
日米の金利差拡大などを背景に、円安が8月に再加速したことが一因だ。電子部品メーカーの海外売上高比率は相対的に高く、海外の顧客との決済はドル建てが主流。このため円安は、円換算した売り上げを押し上げる。
米アップルが発売したスマホの新機種「アイフォーン15」は搭載する有機ELパネルや望遠レンズなどの歩留まりの伸び悩みなどで上位モデルの量産が遅れていたが、8月は回復が進んだもようだ。スマホメーカーによる部品の在庫削減も7月までにほぼ一巡し、電子部品メーカーには実需に見合った発注が入り始めたとみられる。人工知能(AI)の開発や運用に必要な高出力サーバー関連投資の増加も追い風だ。
一方で先行き不透明感も強い。米国ではUAWによるストライキが自動車メーカーの操業に影響を与え、電気自動車(EV)シフトにも遅れが出始めている。米自動車大手3社(ビッグ3)や欧州ステランティスに製品を供給する電子部品メーカーにも影響を及ぼす可能性がある。
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