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【ディープテックを追え】ワンチップコンピューター、実現のカギ握るスタートアップの独自技術とは

【ディープテックを追え】ワンチップコンピューター、実現のカギ握るスタートアップの独自技術とは

チップ

中央演算処理装置(CPU)やセンサーなどをチップサイズにし、配線と基板はいらない。このユニークなコンピューターの実現を目指すスタートアップがPremo(プレモ、東京都文京区、辻󠄀秀典最高経営責任者〈CEO〉)だ。実現のカギを握るのはチップ同士が無線通信する独自技術だ。

現在のコンピューターは基板に電子部品をはんだ付けしたり配線したりする。チップが外部と通信するためには配線が必要だからだ。またチップや配線を保護するため、樹脂によりパッケージングする。チップの通信高速化など性能が向上するにつれ、パッケージングも小型化の開発が進むなど、デバイスの小型化が進んでいる。

一方、プレモは配線やパッケージングを減らすことで、デバイスの小型化を目指す。同社の強みは、東京大学大学院の入江英嗣教授が開発した技術だ。従来のチップを配線によって通信するのではなく、無線でチップを通信する。具体的にはCPUの回路の周辺に、パルスを送信・受信できるコイルを配線する。高周波アンテナなどを搭載せずに、データをやりとりできるようにする。

送信・受信チップ

同社はこのコンピューターを複数並べ、デバイスを構築する。配線や基板を大幅に減らせる。従来のコンピューターが配置できなかったインフラやスポーツ分野などで応用する。鉄道線路の異常検知したり、スポーツ用品に搭載しセンシングしたりする。辻󠄀CEOは「これまでのコンピューターよりも配線やパッケージングが減る。小型化に加え、パッケージング工程を減らせるため製造コスト低減や歩留まりの向上につながる」と話す。

10月にも実証用のチップを作り、コイルによる通信機能を確認する。早ければ2024年にも概念実証(PoC)を行いたい考えだ。25年以降に商用化を目指す。同時にデバイスを使ったデータ分析などのソフトウエアも提供する。

将来は同社のワンチップコンピューターの設計技術をデバイスメーカーにライセンスする。辻󠄀CEOは「英アームのような形で収益を得られる形に持っていきたい」と話す。

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