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着氷力は検出限界以下…雪でも標識見えやすくする「着氷雪防止フィルム」の実力

産総研が開発
着氷力は検出限界以下…雪でも標識見えやすくする「着氷雪防止フィルム」の実力

開発した着氷雪防止フィルム

産業技術総合研究所の浦田千尋研究グループ長と穂積篤上級主任研究員らは、油で氷を滑らせる着氷雪防止フィルムを開発した。着氷力は検出限界以下。標識などに貼ると表示内容が見えやすくなる。屋根や信号機などに雪が積もりにくくなり、重さによる倒壊を防げると期待される。

リコーンゴムにシリコーンオイルを含ませて、冷えるとオイルがしみ出す透明フィルムを作製した。オイルが表面を覆うと水滴や氷が滑落する。氷を着けて滑らせ着氷力を測定すると、検出限界以下だった。ほぼ0キロパスカルといえる。

オイルのしみ出す温度はシリコーンゴムとオイルの比率などで制御できる。研究室ではマイナス15度Cから50度Cの間で調整できた。評価設備を用意し試験すれば、マイナス15度C以下にも制御できる。

ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にシリコーンゴムとオイルの混合ゲルを成膜する。ロールツーロールの連続生産が可能になった。従来は塗料としての利用を想定していたが、フィルム化で標識などの平面に貼れるようになった。施工が簡単になる。更新も剥がして貼り替えるだけで済む。フィルムは透明でデザインを損なわない。

2023年冬に福井県との実証実験で耐久性などを検証する。標識のほか、反射材や信号機などの交通インフラの雪落とし作業が要らなくなると見込む。雪は地上気温が0度C以上でも降り、雪質によって氷と水の混ざり具合が変わる。地域に合わせて滑氷機能を調整し実用化を目指す。


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日刊工業新聞 2023年10月30日

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