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288サイズで、足に本当にフィットする靴を!―パイロットシューズ

婦人靴に基準品質の認証
288サイズで、足に本当にフィットする靴を!―パイロットシューズ

「パンプスメソッド研究所 i/288」のロゴマークと基準品質をクリアしたパンプス

**実はサイズ豊富な靴
 人の足は千差万別だが、その足を入れる靴はなかなか融通や調整が利かない。しかし、実のところ靴は洋服以上に細かいサイズで展開されている。

 例えば婦人靴では、足長は日本工業規格(JIS)で19・5センチメートルから27センチメートルまで5ミリメートル刻みで16サイズある。この16サイズのそれぞれに、足囲(6ミリメートル刻み)と足幅(2ミリ―3ミリメートル刻み)に基づくA、B、C、D、E、EE、EEE、EEEE、Fの9サイズが用意されている。掛け合わせると足長16サイズと足囲・足幅9サイズで計144サイズとなる。

足型形状2つで60~70%カバー


 では仮に、足長の刻みを1ミリメートルに細分化したら「千差万別」の足に合わせられるのだろうか。答えはノーだ。以前、足長を半分の2・5ミリメートル刻みにして販売した経験があるが、見事に失敗した。

 この失敗から、私たちパイロットシューズ(東京都台東区)は日本女性の足の形状やサイズを実態調査し、日本女性にはどんな靴がベストフィットするのかを産業技術総合研究所と一緒に研究してきた。結果、計144サイズのJISに二つの足型形状を準備すれば、60%近い日本女性の足に合わせられ、さらに試し履きしながら少しの調整を加えると70%までカバーできることが分かった。

デザインとサイズ感の両立


 都合、144サイズ×2足型形状で288サイズの展開となるが、「ファッションは足元から」と言われるように、女性は靴に履きやすさと共に美しさも求めている。美しさのためのデザインも追求するとなれば、1社でできる仕事の範囲を越えてしまう。そこで、全日本革靴工業協同組合連合会に加盟する婦人靴メーカーと靴型を共有し、各社の負担を軽減することにした。ただ、どのメーカーがどのサイズ、どのデザインを作っても同じサイズ感を届けられなければ、買い手と販売員との信頼が崩れるとの心配があった。

 私たちは産総研の研究者からアドバイスを受けて製造ガイドラインを作成し、基準品質の認証を行うことにした。そして、靴を試し履きして購入できる拠点「パンプスメソッド研究所 i/288」を2015年12月に東京都千代田区大手町に開設した。女性一人ひとりに自分の本当の足のサイズを知ってもらい、足にも心にもフィットするパンプスを見つけてもらおうという挑戦だ。履き心地を通じて靴の使用価値を高めていきたいと考えている。
(文=パイロットシューズ代表取締役・藤原仁)

【一言メッセージ/産業技術総合研究所(産総研)人間情報研究部門長・持丸正明氏】
 「パンプスメソッド研究所 i/288」は顧客の足形形状と購入靴の情報を蓄積・分析し、靴の一層の履き心地向上を目指す取り組みである。標準化の経験を生かして産総研が制度設計で支援した「認証」がブランドとなって発展することを期待している。

※日刊工業新聞では「産総研と地域企業・産業振興で連携」を連載中
日刊工業新聞2016年3月10日 科学技術・大学面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
左右の足の大きさが違うのと、幼少期からの外反母趾の影響でパンプス選びでは文字通り痛い思いをたくさんしてきました。バリエーションを持つのに、自社だけでなく他社とも連携し「認証」化するというやり方は、他の製品でも横展開できそうです。

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