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WDとの統合交渉白紙…キオクシアは成長戦略を描き直せるか

WDとの統合交渉白紙…キオクシアは成長戦略を描き直せるか

キオクシアは今後、単独での経営の立て直しに挑む(本社)

半導体メモリー大手のキオクシアホールディングス(旧東芝メモリ、東京都港区)と同業で協業先の米ウエスタンデジタル(WD)との経営統合交渉が打ち切られた。キオクシアは今後、単独での経営の立て直しに挑む。東芝から分離した際に描いていた新規株式公開(IPO)も視野に入れる。だが、市況の悪化が続く中、新たな成長路線を敷き直し、巨額の投資を続けるのは容易ではない。

両社の統合は当初は10月中の合意を目指していた。NAND型フラッシュメモリーの世界シェアでキオクシアは3位、WDは4位であり、統合すれば世界トップの韓国サムスン電子と同規模になる。

ただ、キオクシアの筆頭株主である米投資ファンドのベインキャピタルの主導する枠組みに出資していた同業2位の韓国SKハイニックスが「経営統合に同意しない」と反対を表明。さらに統合をめぐり、ベイン側が提示した条件とWD側とで折り合いがつかず、最終的な合意に至らなかったようだ。

西村康稔経済産業相は閣議後の会見でキオクシアは「デジタル化の加速に不可欠な先端メモリー半導体の製造基盤技術を保有する重要な企業だ。経済安全保障の観点からも重要」とし、支援を継続する方針を示した。

経営統合が白紙になったため、キオクシアは単独での生き残り策を練り直す。キオクシアとWDは三重県四日市市と岩手県北上市の製造拠点の投資を分担するなどしており、協業自体は続ける。

ただ、単独でのIPOを目指す新たな成長戦略を描き直すにも、置かれた状況は厳しい。市況の悪化は続いており、キオクシアは2023年4―6月期連結決算で1031億円もの巨額の当期赤字を計上。早期退職の募集も計画する。

また、現在の生成人工知能(AI)ブームにうまく乗れた短期記憶が用途のDRAMと違い、長期記憶が用途のNAND型フラッシュメモリーはそこまでの恩恵は得られないという見方もある。

一方で総合電機の半導体事業幹部は「米エヌビディアも、元々は画像処理半導体(GPU)から今の生成AIブームをけん引するようになった。何かきっかけがあればNANDも別の事業に役立つ可能性がある」と、国内に製造拠点がある意義を強調した。

英調査会社オムディアの杉山和弘コンサルティングディレクターはキオクシアは企業価値を上げるため「早急に他のパートナーを見つける必要がある」と指摘している。


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日刊工業新聞 2023年10月30日

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