ヒトiPS細胞で眼の発生段階を再現
16年度末までに臨床研究申請。角膜難病の治療法確立へ
大阪大学大学院医学系研究科の西田幸二教授らの研究グループは、ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)から眼全体の組織の基の発生を再現させる手法を確立した。この手法による培養で角膜上皮組織の作製に成功した。ウサギへ移植したところ、眼の機能回復効果を確認できた。難治性角膜上皮疾患の治療法の確立に向け、2016年度末の臨床研究申請を目指す。成果は9日、英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。
研究グループは、ラミニン511と呼ばれる細胞の培養基材を使い、培養皿上で平面的にiPS細胞を培養。四つの領域を持つ同心円状の組織「SEAM」を作製した。
その際、細胞の分化誘導を促す特定の因子を添加せず、細胞の自律的な分化によりSEAMができた。内側から数えて三つ目の領域に発現した角膜上皮前駆細胞を分離し、約12週で角膜上皮組織を完成させた。
これまで、網膜など眼の奥の部分をiPS細胞から作る技術は報告されていたが、角膜など眼の表面部分を、奥の部分と同時に再現することは難しかった。四つの領域からなる同心円状のSEAMでは、領域ごとに眼の組織のあらゆる前駆細胞が発現している。特定の層を分離することで、網膜や水晶体など角膜以外の組織も作製できると考えられる。
西田教授は「失明状態にある患者さんの視力が回復するよう研究を進める」とコメントした。今後、自家移植と他家移植の両面で臨床研究を進めていき、コストや時間がかかる自家移植よりiPS細胞バンクを用いた他家移植を優先する考えを示した
研究グループは、ラミニン511と呼ばれる細胞の培養基材を使い、培養皿上で平面的にiPS細胞を培養。四つの領域を持つ同心円状の組織「SEAM」を作製した。
その際、細胞の分化誘導を促す特定の因子を添加せず、細胞の自律的な分化によりSEAMができた。内側から数えて三つ目の領域に発現した角膜上皮前駆細胞を分離し、約12週で角膜上皮組織を完成させた。
これまで、網膜など眼の奥の部分をiPS細胞から作る技術は報告されていたが、角膜など眼の表面部分を、奥の部分と同時に再現することは難しかった。四つの領域からなる同心円状のSEAMでは、領域ごとに眼の組織のあらゆる前駆細胞が発現している。特定の層を分離することで、網膜や水晶体など角膜以外の組織も作製できると考えられる。
西田教授は「失明状態にある患者さんの視力が回復するよう研究を進める」とコメントした。今後、自家移植と他家移植の両面で臨床研究を進めていき、コストや時間がかかる自家移植よりiPS細胞バンクを用いた他家移植を優先する考えを示した
2016年3月10日 科学技術・大学面