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1―3月期GDP、“うるう年効果”がなければゼロ成長!?

経済成長と財政健全化の「二兎」遠のく
 1―3月期の国内総生産(GDP)の行方が安倍晋三政権に経済財政運営の見直しを迫る可能性がある。同期は2月の”うるう年効果“がなければ「ほぼゼロ成長」と予測するシンクタンクが少なくない。1月の経済指標は雇用情勢こそ改善傾向にあるものの、個人消費、生産、輸出などで懸念が残り、年度内の明確な回復を見通しにくい。堅調な企業収益にも“ブレーキ”がかかりつつあり、経済成長と財政健全化の“二兎”が遠のきかねない。

実質消費支出、5カ月連続減


 1月の経済指標が良くない。総務省がまとめた同月の家計調査によると、2人以上世帯の実質消費支出は前年同月比3・1%減と5カ月連続の減少。実質所得の伸び悩みに、暖冬による冬物衣料などの需要減が重なった。

 経済産業省による同月の鉱工業生産指数(速報、季節調整値)は前月比3・7%上昇と3カ月ぶりの増産。だが日本の正月休みが少なかったほか、中国の春節(旧正月)を控えた駆け込み需要が奏功したもので、先行きの生産予測指数は2月が同5・2%下降と大きく落ち込み、3月が同3・1%上昇するなど「一進一退」(経産省)を予測する。

輸出も停滞


 輸出も停滞が続く。財務省がまとめた1月の貿易統計(速報、通関ベース)では輸出は前年同月比12・9%減の5兆3516億円と4カ月連続の減少。年初来の国際金融市場混乱の”発火点“となった中国・新興国経済の減速を裏づけるように、同月の対アジア輸出は同17・8%減と大幅な減少だった。

 輸出減は欧米にも及ぶ。同月の対米輸出は同5・3%減、対欧州連合(EU)は同3・6%減となった。原油安と中国の構造改革の遅れが世界経済の減速懸念を招き、政府は2月の月例経済報告で米国景気の基調判断を9カ月ぶり、ユーロ圏は3年ぶりに基調判断をそれぞれ下方修正した。

 円安の追い風を受けて堅調だった日本企業の収益も先行きが懸念される。財務省の15年10―12月期の法人企業統計調査では全産業(金融機関を除く)の経常利益は前年同期比1・7%減と4年ぶりの減益だった。

「アベノミクス」、前年より円高は初、


 ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長は「16年1―3月期の円ドルレートは、政府の経済政策『アベノミクス』始動後、初めて前年よりも円高に振れることが見込まれる」とし、「同期(の実質GDP)はうるう年の影響を除けば、ほぼゼロ成長」と予測する。

 主要シンクタンクは同期の実質GDP成長率を0%台後半と予測し、2期連続マイナス成長は回避とみる。だが、うるう年効果を除けば実体はマイナス成長と指摘する声もある。

安倍政権は経済成長と財政健全化の「二兎を追う」と掲げた経済財政方針を見直し、経済減速を理由に17年度の消費増税延期に傾くのか―。1―3月期のGDPを占う経済指標が1月からつまずき、アベノミクスが正念場を迎えつつある。
(文=神崎正樹)
日刊工業新聞2016年3月10日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
財政健全化は当分先送り。

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