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キヤノン、医療機器で”世界3強"に迫ることはできるか

まず販売網を手中に。中長期で技術のシナジー強める
キヤノンの医療機器事業は売上高1000億円未満と中堅規模だが、東芝メディカルシステムズの買収によって国内医療機器業界で一躍上位に駆け上る。医療機器は世界で市場が急拡大する期待の分野であり、国内企業が事業を拡大させるには新興国を中心としたグローバル展開が欠かせない。キヤノンは東芝メディカルを傘下に収め、世界市場への道を一気に開く。

 東芝メディカルはコンピューター断層撮影装置(CT)の国内首位メーカー。CT、磁気共鳴断層撮影装置(MRI)、超音波画像診断装置など画像診断系の機器を幅広くそろえている。キヤノンもこれまで画像診断装置を手がけてきた。カメラ事業で培ったイメージング技術を応用して開発したデジタルX線画像診断装置(DR)や眼科診断機器などの高機能製品は高い競争力を持つ。

 キヤノンは今回の買収で医療機関とのネットワークや世界販売網を手に入れ、次世代医療機器の開発も加速する。DRとCTはともに医療被ばくの低減が課題であり、両社の技術を組み合わせることでイノベーションを起こせる。遺伝子診断装置や乳がん検査装置など事業の共通項も多く、技術融合によって大きな相乗効果が見込める。

 東芝メディカルの画像診断装置は米GE、独シーメンス、蘭フィリップスの世界3強の一角を崩すまでに成長している。世界展開もいち早く進め、中国、ブラジル、マレーシアに生産拠点を設けるなど新興国開拓に力を入れてきた。画像診断装置は従来の検査用途だけではなく予防や治療分野でも利用が広がっており、今後はキヤノンが安定成長株の事業を引き継いでいく。
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日刊工業新聞2016年3月10日「深層断面」から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
現状ではキヤノンと東芝メディカルの製品群は重複しておらず、事業効率や生産性の向上といった面での効果は小さい。ただ東芝メディカルは顧客である医師との強力なパイプを持つ。「医師とのパイプを築けなければ新しい技術を導入するのが難しい」(医療事業関係者)という面もあり、東芝メディカルがキヤノンの医療事業を取り込んで事業を主導する方が、成長と将来の相乗効果を見込めるかもしれない。一方でキヤノンの御手洗会長は日米欧に本社機能を置く「三極体制」の構築を進めており、昨年には米ニューヨーク州に医療事業の統括会社を設立した。今の戦略に東芝メディカルの事業をどう組み合わせていくか。

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