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「米国版はやぶさ2」探査機の試料解析、「リュウグウ」で得た試料との違いは?

「米国版はやぶさ2」探査機の試料解析、「リュウグウ」で得た試料との違いは?

ベンヌの試料が入ったカプセルを回収(NASA提供)

「米国版はやぶさ2」と呼ばれる米航空宇宙局(NASA)の小惑星探査機「オシリスレックス」が地球に帰還し、小惑星「ベンヌ」で採取した試料が入ったカプセルを届けた。すでに分析を進めており、水や炭素が豊富に含まれていることが分かった。この試料の一部は日本にも送られ、小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」で得た試料の分析結果と比べる。はやぶさ2の地球帰還から12月で3年、新たな発見はあるだろうか。(飯田真美子)

NASAはカプセルが帰還してから10日間で分解し、3週間ほどかけて試料の分類・分析などを進める。電子顕微鏡や赤外分光計、化学元素分析、X線を利用した断層撮影を実施し、試料中に豊富な炭素と水が含まれている証拠を得られた。オシリスレックスプロジェクトの責任者で米アリゾナ大学のダンテ・ローレッタ教授は「この成果は氷山の一角。さまざまなデータと組み合わせて調べることが重要」とコメントした。

ベンヌは炭素と有機分子を含むとされるB型小惑星で、C型小惑星に分類されるリュウグウに近い組成。両小惑星の試料の科学データが得られれば、より精度の高い地球や生命の誕生の謎の解明につながる成果が得られると期待される。

またベンヌは地球近傍惑星の一つであり、将来的に地球への衝突が危惧されている天体としても有名。NASAのビル・ネルソン長官は「太陽系の起源や形成につながる成果だけでなく、小惑星が地球に衝突するのを防ぐ『プラネタリーディフェンス』に関する小惑星の種類の理解にもつながる」と強調した。

カプセルから回収したベンヌの試料(NASAのYouTubeチャンネルより)

オシリスレックスは2018年にベンヌに到着し、20年に試料を採取した。23年9月に地球へ帰還したが、試料の入ったカプセルを落下させ、はやぶさ2と同様に他の小惑星を目指して新たな旅を続けている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の国中均所長は、ベンヌの試料が入ったカプセルが地球に帰還するタイミングに現地で回収の様子を見届けた。「自国内に着陸されたこともあり、ヘリコプターの数が多く回収体制が大がかりだった。他国で回収した日本にはできない方法だと感じた」(国中所長)とスケールの違いに圧倒されたという。

探査機が小惑星に向かって試料を採取して地球に運ぶ「サンプルリターン」ミッションは、初代「はやぶさ」とはやぶさ2に続いてオシリスレックスが3例目。日本の惑星探査に関する知識や技術は他国より優れているといっても過言でない。国中均所長は「惑星探査の分野でカプセルに関する技術は日本が一番。この技術を今後も引き継ぎたい」と強調する。

実はベンヌの試料が入ったカプセルは定時刻よりも約3分間はやく地上に落下。これに関してパラシュートを開く前に不具合があったとみる声もあり、一つ間違えれば試料を失っていたのではないかという指摘もある。日本の宇宙開発は安心・安全であることを掲げる中で、惑星探査で確立した技術が海外でも広く使われるようになる可能性は高い。

日刊工業新聞 2023年10月18日
飯田真美子
飯田真美子 iidamamiko
オシリスレックスが地球に帰還しました。すでに分析も始まっており、さっそく水や有機物の痕跡が見つかりました。日本にもサンプルが送られてくるので、そのあたりも楽しみです。一方でカプセル到着時にトラブルがあったという見方もあり、気になるところです。

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