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“河童と人魚”動画が話題!宮崎・延岡市の次世代産業づくり

首藤市長に聞く
“河童と人魚”動画が話題!宮崎・延岡市の次世代産業づくり

ものづくり改善インストラクタースクール延岡の現場実習

 北九州市から宮崎市までの東九州自動車道が4月24日に全線開通する。その沿線にある宮崎県延岡市は旭化成発祥の工業都市。地方創生に向けた総合戦略をエンジンに、第6次長期総合計画を策定。東九州道を起爆剤に延岡新時代を開く首藤正治市長に話を聞いた。

 ―東九州道の整備効果が出ています。
 「九州有数の観光地、高千穂峡の近くまで東九州道から分岐する道路も開通した。これにより宮崎県北地域には福岡や大分、さらに四国からと観光客が増えている。市が昨年秋に開催した『鮎やな』イベントの観光客数は前年度の5割増。東九州道に接する道の駅は開通前と比べて利用客、売り上げとも増えた。4月には北浦インターチェンジ近くに集客施設『北浦臨海パーク』を開設する。道の駅などとの相乗効果により、さらに誘客を加速させたい」

 ―誘客には発信力が必要です。
 「東九州道の開通で誘客やおもてなしへの意識改革が進んだのは確かだ。市には天孫降臨の神話に由来する名所・旧跡などがある。ただ十分に観光地化できていない。今後は観光地化できる地域の掘り起こしも含めて情報発信に力を注ぐ」

 ―活力ある産業づくりに向けて、2016年度の取り組みは。
 「九州保健福祉大学薬学部と連携して薬草の産地化に取り組むほか、東九州道を武器とした企業誘致に取り組みたい。航空機産業に参入した地場企業もいる。地場企業は延岡経済のけん引役だ。新たな工業振興ビジョンを策定中で、農林水産業者の6次産業化を含めて新分野に一歩踏み出す企業を後押ししたい」
 
 「併せて地場企業の現場改善を強化する。昨年、企業OBの改善インストラクターを養成。4月以降、地場企業に派遣するなどして生産性を底上げしていく」

【記者の目/もがいた先に「延(えん)joy」】
「ピンチをチャンスに変える力が地場企業には大切」と首藤市長は強調する。ただ地域間競争が激しさを増す中、自治体にも同様のことが言えるだろう。将来の新たなビジョン作成は生みの苦しみを伴う「もがきが必要」(首藤市長)という。市は合言葉として「延joy」を掲げる。仕事と暮らしを楽しむ街づくりの輝く展望を、そのもがいてかいた汗の分だけ開いてもらいたい。
(文=大分・広木竜彦)

地場中小に企業OB派遣 経営改善の指南役に


 宮崎県延岡市は2016年度、地場中小企業の現場改善強化に乗り出す。企業OBの改善インストラクターで構成する指導チームを企業に派遣、生産性を向上させる管理法などを指導する。改善に取り組む社員の指導力も高める。これらにより地場企業の技術力や経営力を底上げする。改善インストラクターは年数回、企業に有料で派遣する。3月中旬からは社員の指導力を高める勉強会を定期的に開く。

 この事業は16年度に実施する「延岡の産業支援キーパーソン展開事業」の一環。運営は宮崎県工業会県北分室(延岡市)に委託する。同市は15年度に同キーパーソン育成事業を実施。9月に生産性改善指導員育成機関「ものづくり改善インストラクタースクール延岡」を開設した。派遣するインストラクターと改善を主導する社員は同スクールを修了している。

 2期目となる同スクールは16年7月をめどに開講予定。募集定員は約15人。16年度は実習主体のカリキュラムを検討している。今回の事業を通じて「今後はモノづくり企業に限らず、6次産業化に取り組む農林水産業者の生産性向上にもつなげたい」(金丸正一同県工業会専門員)としている。
日刊工業新聞2016年3月8日 中小企業・地域経済面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
地方都市と中小企業は似ている。人(または企業)を呼びたくても、まず存在を知ってもらうことから始めなければいけない。そして名前を知ってもらえても、次はたくさんの同等規模の競合から選ばれる必要がある。 ただ最終的な選択肢にまで残ったときに、最後の決め手は「担当者の熱意だった」ということはよく聞く。 もちろん企業誘致でも人材採用でも、相手が求める条件を満たした上でというのは大前提。「熱意=支援制度」ということもある。だが、その最後のところで選ばれるかどうかは、トップたる社長なり首長の意志が組織で共有できているか、ということだと思う。 その意味で延岡市は、「河童と人魚」という移住PRの動画を見ても、市長の「もがきが必要」という“もがき感”が伝わってきて好印象でした。

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