体操の世界大会、競技採点AIを10種目に適用した成果
人工知能(AI)が体操競技の採点をサポート―。国際体操連盟(FIG)と富士通は、共同開発している体操競技の「採点支援システム(JSS)」のAI技術などを強化し、このほどベルギーのアントワープで開かれた「第52回世界体操競技選手権大会」において、鉄棒や跳馬、平行棒など男女合わせて全10種目に適用した。
JSSは競技者の動作をセンシングし、数値データとして分析することでAIが技を自動判定する仕組み。関節の角度など、審判が正確な体の動きを見たい場面の数値情報を表示することで、正確な判定を支援する。
AI技術の強化に加え、従来のセンサー方式をカメラ映像による画像分析に置き換えるなどで、体操の高速で複雑な動きをこれまで以上に精緻に捉えることに成功した。
FIGはJSSを活用して技を判断するガイドライン(指針)を11月から順次公開する。FIG加盟国はJSSを、練習中に選手の能力や技の習熟度を評価するトレーニングプログラムの一環として利用できるようになる。
近年、体操競技では選手の競技力向上などに伴って技の複雑化や高度化が進み、競技を判定する審判により高度なスキルが求められ、負荷が高まっている。そこでFIGと富士通は採点の公平性や透明性を高める取り組みとして2017年にJSSの開発に着手し、19年から世界体操選手権大会をはじめとする世界大会における体操の一部の種目で活用を進めてきた。
富士通はJSSで培った技術やノウハウを融合したデータ解析プラットフォーム(基盤)「ヒューマン・モーション・アナリティクス(HMA)」を、24年4月から幅広い産業に提供する予定。具体的にはヘルスケア領域で予防医療や運動療法を支えるシステムの開発や、流通向けの顧客行動分析、製造現場の作業効率化などへの適用などを想定する。
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