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富士重が新車台で目指す「唯一無二の存在」

富士重が新車台で目指す「唯一無二の存在」

「スバルグローバルプラットフォームでかつてない進化を目指す」と吉永社長

 富士重工業は7日、2016年後半から発売する新型「インプレッサ」から導入する次世代プラットフォーム(車台)「スバルグローバルプラットフォーム(SGP)」を公開した。約13年ぶりの新車台。全車を相似形の車台として一括企画する。感性に響く走りと世界最高水準の安全性能を全車で実現。年販100万台超へ弾みをつける。

 都内で会見した吉永泰之社長は「ブランドの核である『安心と愉しさ』を加速し、強みを伸ばす」と語った。新車台は25年までの衝突安全性能などを見越しており、自動運転や電動化にも同じ設計構想で対応する。

 思い通りに動く車を追求するため、1000分の1秒単位で車両各部の動きを計測。剛性を現行車比7割増―2倍にし低重心化も進めて「欧州車を上回る動的質感とした」(大拔哲雄執行役員)。運転支援システム「アイサイト」などに新車台と新デザインを加え、かつてない進化を目指す。

販売100万台目前、ブランド戦略カギ−原点「安心と愉しさ」磨く


 新車台「スバルグローバルプラットフォーム(SGP)」を導入して実施する一連の全面改良は、富士重工業が100万台規模の販売を維持する試金石となる。世界大手に比べれば小さな規模ながら、車種が少なく、主要販売地域が北米と日本に限定される富士重工にとって楽に達成できる数字ではない。実際に2009年ごろまで同社の世界販売は60万台前後を行ったり来たりしていた。

 100万台が目前となった快進撃は、主に11年以降に「インプレッサ」から実施した主力車の全面改良によって支えられている。「安心と愉しさ」という新ブランド戦略を打ち出したのも11年だ。ただ、根幹の車両技術は03年に導入した車台をベースにしていたたため、新車台は大きな変化点で、ブランド戦略の真価が問われる。

 新車台は車種間の共通化範囲を広げ、全ての車種で安全レベルを引き上げるなどで、「安心と愉しさ」を磨く。吉永泰之社長が繰り返し語るこの言葉は、同社が思い悩んだ末に行き着いたもの。かつてブランド戦略を練る過程で「環境車を目指したい」という社員の声もあったが、社内のリソースでは困難で、内にあるものを見つめ直して出てきたのがこれだった。

 為替の追い風もあって、富士重工は成功している自動車メーカーの代表格となったが、成功すればするほど同じポジションを狙う競合は増える。13年ぶりの新車台で、唯一無二の存在になれるか注目される。

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富士重、生産担当役員が語る「新車台」導入の狙い
日刊工業新聞2016年3月8日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
先日公開した生産担当役員の笠井雅博取締役専務執行役員のインタビューをご覧になると、記事の補完になります。ぜひ。

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